【論文解説】経カテーテル的三尖弁形成術がもたらすもの【論文解説】

Transcatheter Repair for Patients with Tricuspid Regurgitation
N Engl J Med. 2023 May 18;388(20):1833-1842.

今回の抄読会では、経カテーテル的三尖弁形成術に関して、NEJMに掲載された論文が紹介されました。

重度の三尖弁閉鎖不全症は、それほど稀ではなく、しばしば生活の質を低下させる心臓疾患です。三尖弁逆流を減少させることは、症状を軽減し、臨床転帰を改善する可能性があると考えられています。外科的介入に関しては、心機能の問題や、それに伴う手術リスクの高さから、タイミングの難しさから外科的介入を行うか、議論が続いています。その中で、経カテーテル的弁形成術が登場し、シングルアームでの先行研究で良好な結果を示しています。本論文は尖弁閉鎖不全症治療の中でも、経カテーテル的な弁形成を取り上げた前向き無作為化比較試験です。

重症の三尖弁逆流に対する三尖弁経カテーテル的修復術(TEER)の前向き無作為試験が行われています。米国、カナダ、ヨーロッパの65施設で症候性重症三尖弁閉鎖不全患者が登録され、TEER群と内科的治療群(対照群)に1:1の割合で無作為に割り付けられています。主要エンドポイントは、あらゆる全死亡または三尖弁手術、心不全による入院、Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)を用いて測定したQOLの改善、の複合エンドポイントとされ、三尖弁逆流の重症度と安全性も評価されました。

結果ですが、350人の患者が登録され、175人が各群に割り付けらました。患者の平均年齢は78歳で、54.9%が女性、AF90%です。手技成功は98.8%、自宅退院が97.7%です。主要エンドポイントはTEER群で良好な結果でした(Win ratio、1.48;95%信頼区間、1.06〜2.13;P = 0.02)。死亡または三尖弁手術の発生率、心不全による入院率は両群間に差はみられませんでした。KCCQのQOLスコアは、TEER群で有意に改善しました(P<0.001)。サブ解析でも、ほとんどの群でQOLの改善が確認されています。30日後、TEER群では87.0%で三尖弁逆流は中等度未満に制御されており、98.3%は30日目に主要な有害事象は観察されていません。

本研究の結果では、サンプル数の問題、ホーソン効果の影響などが、研究結果に影響した可能性が考えられます。

経カテーテル的三尖弁形成術は重症三尖弁閉鎖不全患者に対して安全で、三尖弁閉鎖不全の重症度を低下させ、QOLの改善に関連しました。

発表後は、以下の項目で議論が行われました。
・国内での、現時点での介入するポイント
・ホーソン効果について
・死亡、心不全入院で有意差がなかった点に関して
・三尖弁の外科的介入の判断の難しさ

                     発表:兼田先生   文責:吉岡

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