【論文解説】TAVI症例におけるPCIの最適なタイミングは?【論文解説】

Comparison of different percutaneous revascularisation timing strategies in patients undergoing transcatheter aortic valve implantation
EuroIntervention. 2023 Sep 18;19(7):589-599.

経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の最適な施行タイミングは明確ではありません。TAVI症例でのCAD合併は珍しくなく、予後不良因子でもあります。TAVI前・TAVI中・TAVI後のPCIには、それぞれにメリット・デメリットがあり、現在も議論が続いています。この論文では、TAVI患者におけるさまざまなPCIタイミングの比較を行っています。

本論文は、REVASC-TAVIレジストリ(国際的レジストリー)に登録されたTAVIを施行される患者で、安定した冠動脈疾患(CAD)を有する患者のうち、TAVIの前後にPCIを受ける予定の患者、またはTAVIと同時にPCIを受ける予定の患者を解析対象としています。主要エンドポイントは全死亡、そして2年後の複合エンドポイント(全死亡、脳卒中、心筋梗塞、うっ血性心不全による再入院)の複合です。転帰はIPTW法を用いて調整されています。

結果としては、 1,603例が組み入れられています。PCIはTAVIの前に65.6%(n=1,052)、TAVI後に9.8%(n=157)、TAVIと同時に24.6%(n=394)でそれぞれ施行されました。2年後の全死因死亡はTAVI前またはTAVI同時PCIと比較して、TAVI後にPCIを受けた患者で有意に低値でした(6.8% vs 20.1% vs 20.6%;p<0.001)。同様に、複合エンドポイントでも、TAVI前またはTAVI同時PCIと比較して、TAVI後にPCIを受けた患者で有意に低い結果でした(17.4% vs 30.4% vs 30.0%;p=0.003)。結果は0~30日および31~720日のイベントを考慮したランドマーク解析でも確認された。

この論文では著者らは、『TAVIが予定されている重症大動脈弁狭窄に合併した冠動脈疾患を有する患者において、TAVI後にPCIを施行することは、他の血行再建術のタイミング戦略と比較して、2年間の臨床転帰の改善と関連している』としています。ただし、本研究はレジストリー研究に基づいており、無作為化臨床試験での追認が望まれます。特に、TAVI弁の種類によっても、その判断が変わる可能性があり、更なる検討が望まれる。

発表後は、以下の点に関して議論が行われました。

・なぜ全死亡が増えているのか?
・先にPCIを行う群の背景が問題となるのか?
・試験期間が長く、その間にTAVI自体の死亡率、手技が変化した可能性。

                               発表:陳先生 文責:吉岡

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