静脈血栓塞栓症とは?

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静脈血栓塞栓症

静脈血栓塞栓症とは、主に足の静脈にできた血の塊(血栓)が、血流にのって肺の動脈に詰まる病気です。
血栓の場所によって、以下の2つに分けられます。

深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)

 足の静脈にできた血栓症

肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)

肺の動脈に詰まった血栓症で、別名『エコノミークラス症候群』

 なんらかの原因で血液が凝固(固まること)することで発症します。原因として、長時間同じ姿勢で脚を動かさないでいること(旅行や手術後など)、癌などの病気、避妊薬などが知られています。エコノミークラスでの長時間の飛行により起こりやすいので

『エコノミークラス症候群(旅行者血栓症)』

とも呼ばれています。

 近年では、災害時の避難所生活や車内避難も、血栓症の引き金となる事が知られています。

深部静脈血栓症の症状

 典型的な症状は、

  1. 足の痛み
  2. 足のむくみ・だるさ
  3. 足の皮膚の色の変化

です。

 片足に症状が出ることが多いですが、両足に出ることもあります。また、血栓が小さい場合などは、自覚症状がないこともあります。

肺血栓塞栓症の症状

 典型的な症状は、

  • 突然の呼吸困難
  • 突然の胸の痛み
  • 動いたときの息切れ
  • 意識を失う

です。

 大きな血栓が肺の血管に詰まると、血流が遮断されて肺で血液に酸素を受け取ることができず、症状がでます。重症の場合は生命に関わる事があります。詰まった血栓が小さい場合などは、自覚症状がないこともあります。

静脈血栓塞栓症の検査

 採血検査、超音波検査、C T検査などを行います。

 深部静脈血栓症の場合、足の血栓を調べる下肢静脈超音波検査(エコー検査)や、血栓の程度を調べる血液検査などがあります。また、肺血栓塞栓症の場合は、血栓による肺の血管への影響を調べる心臓超音波検査(心エコー図検査)を追加します。全身の血栓の有無を評価するためには、造影剤を用いたCT検査などがあります。このような検査を、担当した医師が必要に応じて選択します。

治療方法

 基本的には薬による治療です。必要に応じて追加処置を行います。

 治療は、薬の使用が基本となります。新しい血栓の形成を予防する目的で、抗凝固薬(こうぎょうこやく)が使用されます。状態に応じて、内服や点滴の薬剤を、担当した医師が選択します。再発予防のためにも、最低でも数ヶ月間は十分な内服を行う必要があります。

 これ以外に、血栓を溶かすための薬剤治療(血栓溶解療法)、足などにできた血栓が肺の血管へ移動することを防ぐ治療(下大静脈フィルター)、血管内の血栓を直接吸い出したり砕いたりする治療(カテーテル治療)などが、必要に応じて追加されます。これらの治療は、出血を起こす可能性や、血管を損傷する可能性もあり、追加は慎重に検討されます。

 肺血管の血栓が多く、重篤な状況の場合には、外科手術で直接血栓を除去することもあります。
 治療を入院して行うか否かは、様々な検査で、担当した医師が選択します。

予防方法

 長時間の同じ姿勢を避けて、歩行・足首の運動・水分摂取を心がけましょう。

 バスや新幹線などで長距離移動を行う場合や、避難所生活などでは、長時間同じ姿勢を取らないようにして、水分を適宜補いましょう。足首の曲げ伸ばしなどのマッサージも効果的です。

出典:
1)肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン
2)日本血栓止血学会 血栓症ガイドブック

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この記事を書いた人

【佐賀大学医学部循環器内科ドクター】

佐賀大学医学部循環器内科に勤務するドクターが、心臓にかかわる病気のよくある事例や予防をブログにて執筆しております。少しでも皆さんのお役にたちますように。

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