ときどき胸が痛むことがあります。

胸痛について

 「胸が痛い」という理由で診察に来られる方はたくさんいらっしゃいます。

 一般的に、医師が症状の原因を考えていくとき、いくつかの考え方がありますが、心臓を扱うわれわれは、「命にかかわる、見逃してはいけない病気」から順番に考えていきます。

 胸痛の原因として、見逃してはいけない病気としては、“(不安定)狭心症・心筋梗塞”、“大動脈解離”、“肺塞栓症(エコノミークラス症候群)”、“(緊張性)気胸”の4つをまずは考えます。これらの病気は命にかかわる病気ですので、できるだけ早く診断し、治療を行なわなければなりません。循環器内科で扱う病気としては、はじめに挙げた3つの病気です。

心臓 痛い イメージ

 “狭心症・心筋梗塞”の特徴は、高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方や、たばこを吸う方、肥満の方に多く、「胸の中心部が押される(圧迫感)」と表現される方が多いです。これらの病気は『虚血性心疾患の話』で詳しく記載していますのでご参照ください。

心臓 血管

 “大動脈解離”は心臓から出た血液を全身に送るための血管の幹である大動脈の壁が剥離(はくり)してしまう病気です。「過去に経験したことのないような激痛が、胸や背中に急に生じて、時に腰にかけて移動していく痛み」を伴うことが多いです。

心臓が痛いのは静脈も原因

 “肺塞栓症(エコノミークラス症候群)”は、通常は長い時間足を動かさずにいて、足の静脈に血のかたまり(血栓)ができてしまい、それが血流に乗って移動し、心臓を通過して肺の血管がつまってしまう病気です。「長時間、飛行機に乗っていた」、「長時間、車の運転をしていた」、「長時間、机に座ったまま足を動かさずにいた」方が急に胸が苦しくなったり、痛くなったりすることが多いです。

 胸痛の原因は、これらの“見逃してはいけない病気”のほかにも数多くあります。命にかかわる重い病気から、心臓とは別の臓器による症状、さらには一時的に生じる神経や筋肉の症状など様々なものがあります。心配なようでしたら一度、病院で検査を受けてください。