【論文解説】HFpEFにおけるクローン性造血【論文解説】

Clonal Hematopoiesis in Clinical and Experimental Heart Failure With Preserved Ejection Fraction
Circulation. 2023;148:00–00.

大規模な遺伝子解析により、血液のがんは特定のゲノム異常によって発症することが明らかになりつつあります。しかし、近年の研究によってゲノム異常は血液がんを発症していない群でも検出されることが判明し、クローン性造血として注目を集めています。クローン性造血は新しい免疫学的現象の一つで、様々な疾患に関与します。遺伝子変異から検出可能となり、白血病を高率に発症する事や、心筋梗塞の発症などの新血管疾患のリスク上昇が報告されています。
心不全においても、加齢に伴ってクローン性造血が増加し、心不全の原因に関わらず予後不良であるとの報告があります。
本研究は、HFpEFとクローン性造血との関わりを検討したものです。

本研究の中で、HFpEF患者81例(平均年齢71±6歳、駆出率63±5%)とHFpEFと診断されていない対照36例(平均年齢74±6歳、駆出率63±5%)からなるコホートにおいてクローン性造血を同定しています。コントロールと比較して、HFpEFコホートではTET2を介したクローン性造血が豊富でした。また、HFpEFコホートにおいて、クローン性造血を有する患者は、有さない患者と比較して、E/eʹおよびE/Aの点で拡張機能障害の増悪が示唆されました。70歳以上のHFpEF患者にすると、70歳以上のHFpEF患者と比較して、5年間の心血管関連入院率が多い結果でした。HFpEFにおけるクローン性造血の因果関係を調べるため、 Tet2-CHモデルを用いて評価を行なっています。結果として、心重量/脛骨長および心筋細胞サイズによる心肥大、E/eʹおよび E/eʹおよび左室拡張末期圧による拡張機能障害、がTet2野生型と比較して増悪しています。

発表後は、クローン造血がどのように病態に関わっているのか、が議論されました。

                            発表:高橋先生   文責:吉岡

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