【論文解説】左房機能は認知症の発症と関連するか? 【論文解説】

Association of Echocardiographic Measures of Left Atrial Function and Size With Incident Dementia.
Wang W, et al. JAMA. 2022;327:1138-1148.

今回は左心房の機能およびサイズの心エコー検査測定と、認知症発症との関連に関する研究を取り上げました。

左房機能と心疾患・脳血管疾患の関わりは多数の報告があります。しかし、左房機能と左房サイズが認知症と関連しているかどうかは明らかではありません。本論文は、地域住民を対象とした前向きコホート研究「Atherosclerosis Risk in Communities study:ARIC研究」より、左心房の機能およびサイズの心エコー検査測定と、認知症発症との関連を検討しています。

米国で行われ、1万5,792例のうち5回目の定期受診時に心エコーを受け、心房細動、脳卒中、認知症を有していない症例を対象に解析を行なっています。各種左房機能・容積の計測を2Dエコーで行い、認知症の発症(診察、電話、死因、入院病名コードから判定)との関与を検討しています。

結果としては、4,096例(平均年齢75歳、女性60%)のうち、531例が認知症を発症しました(追跡期間中央値6年)。認知症発生率(100人年当たり)において、すべての左房機能指標において最低五分位群で最も高い結果でした。Cox比例ハザードモデルを用いて左房機能と認知症発症の関与を解析し、左房機能と認知症との間に統計学的に有意な関連が認められました。左房容積に関しては、同様の解析において、有意な関連は認められませんでした。これらの結果は、心房細動または脳卒中を発症した参加者を除外した解析でも同様の結果でした。

考察として、以下の点が議論されています。
•左房機能低下と、将来の認知症発症の関与が示され左房容積係数は有意な因子ではなかった事。
•Mediator analysisからは、AFを介さずに認知症発症と関与しているという結果。
•過去の研究では、AFや顕性脳梗塞とは関係なく、心房機能低下と認知症発症の関係が示されれている。
 →白質増加や非顕性脳梗塞の関与が疑われる・・・
•本研究は探索的な研究であり、そのメカニズムの解明のため、更なる研究、介入の検討が必要である。

発表後は以下の点に関して議論がなされました。
・左房機能と認知機能の関与に関して
・左房機能の評価について

文責・発表 吉岡

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