【論文解説】造血幹細胞ニッチの老化に関する検討

Limited rejuvenation of aged hematopoietic stem cells in young bone marrow niche

Wakako Kuribayashi, Motohiko Oshima, Naoki Itokawa, Shuhei Koide, Yaeko Nakajima-Takagi, Masayuki Yamashita, Satoshi Yamazaki, Bahityar Rahmutulla, Fumihito Miura, Takashi Ito, Atsushi Kaneda, Atsushi Iwama

J Exp Med. 2021 Mar 1;218(3):e20192283. doi: 10.1084/jem.20192283.

造血幹細胞は、多くの血球に分化し、“造血幹細胞ニッチ”と呼ばれる微小環境に存在し、自己複製と分化増殖を行っている。最近の研究結果から、骨髄中の細胞(ニッチ細胞)が、複雑なメカニズムで造血幹細胞機能を調整していることが示されている。

このニッチの老化に関して、寄与を直接評価することは難しいとされている。本研究では、老化造血幹細胞を、前処理(化学療法や放射線照射など)をせずに若いマウスに移植。

老化した造血幹細胞は、若い骨髄ニッチにうまく生着したが、多能性前駆細胞への分化能が損なわれ、骨髄に偏った分化が持続したため、機能的若返りは見られなかった。この傾向は、培養期間を2ヶ月から4ヶ月に長くして二次骨髄移植を行っても、同様の結果であった。トランスクリプトームおよびメチローム解析により、若いニッチは老化した造血幹細胞の一部のプロファイルを回復させた。ただし、老化・若い造血幹細胞いずれでもDNAメチル化プロファイルは回復させなかった。したがって、若いニッチに環境を変えることでも、造血幹細胞の機能を若返らせるには不十分だと考えられた。

本研究の結果を含め、今後造血幹細胞機能への不可逆的な影響の解明が期待される。

●発表後の議論のポイント
・老化した造血幹細胞自体のエピジェネティックな変化が結果に影響するか否か

発表:西村先生  文責:吉岡

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