【論文解説】Watchman FLXデバイスによる左心耳閉鎖術の実臨床成績:FLXibility試験 

Real-world clinical outcomes with a next-generation left atrial appendage closure device: the FLXibility Post-Approval Study
Europace (2023) 00, 1 – 8

 佐賀大学で行われている経皮的左心耳閉鎖術について、これまでの報告の多くはWatchman 2.5デバイスを使用したデータであり、新しいデバイスであるWatchman FLXでの臨床成績は十分とは言えない。特にデバイス留置後にも血栓症を来す症例が危惧され、過去データと比較してどの程度か調べるために、この論文が読まれた。

目的: FLXibility試験は、Watchman FLX市場後の実臨床データを解析したものである。

方法と結果:患者は実臨床における適応基準に従ってWATCHMAN FLXが植え込まれ、植え込み後45~120日に初回フォローアップが行われ、1年後の追跡調査が行われた。すべての主要有害事象は臨床イベント委員会が判定し、TEE/CT画像結果はコアラボが判定した。ヨーロッパの17施設で登録された300例の患者の平均年齢は74.6±8.0歳、平均CHA2DS2-VAScスコアは4.3±1.6、62.1%が男性であった。デバイスの植え込みは99.0%(297/300例)の患者で成功した。植込み後の薬物療法は87.3%(262/300例)でDAPTであった。初回フォローアップ時のコアラボ判定による完全密封率は88.2%(149/169例)、リーク<3mmは9.5%(16/169例)、リーク≧3mm~≦5mmは2.4%(4/169例)、リーク>5mmは0%であった。1年後、93.3%(280/300例)が最終フォローアップを受けていた。60.5%の患者が抗血小板薬を1種類、21.4%がDAPT、5.6%が直接経口抗凝固療法、12.1%が抗血小板薬/抗凝固薬を服用していなかった。1年後までの有害事象発生率は、全死亡10.8%(32/295例)、心血管死/原因不明死5.1%(15/295例)、脳卒中1.0%(3/295例、すべて非致死的)、手術または心嚢穿刺を要する心嚢液貯留1.0%(3/295例)、デバイス関連血栓2.4%(7/295例)であった。

結論:WATCHMAN FLXは、優れた手技成功率、高いLAA封鎖率が得られたが、実臨床で治療適応とされた症例の手技に関連しない死亡率は約10%と高く、左心耳閉鎖術は長期予後の見込める症例で治療適応とすべきである。また、Watchman 2.5と比較して、デバイス関連血栓症は2.4%と低く、市販前調査のPINNACLE FLX私見と同様の結果であった。

院内では下記のようなことがDiscussionされました。

・経皮的左心耳閉鎖術症例の1年死亡率が10-15%と高い理由について、経皮的左心耳閉鎖術の適応となるような長期抗凝固療法継続が必要であるが出血などの理由で継続が困難な症例は、他疾患の関与などで長期予後が見込めない症例が含まれている者と思われる。

・デバイス関連血栓症が生じた場合は、入院での加療か外来での加療となるかは状況に応じて選択される。

発表者・文責 横井

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次