【論文解説】冠微小血管機能障害(CMD)の評価のための運動負荷心電図検査の偽陽性を再考する。

Rethinking False Positive Exercise Electrocardiographic Stress Tests by Assessing Coronary Microvascular Function

J Am Coll Cardiol. 2024 Jan, 83 (2) 291–299

冠微小血管機能障害(CMD)の評価のための運動負荷心電図検査の偽陽性を再考する。

背景

運動負荷心電図検査(EST)は歴史的に心外膜冠動脈の狭窄・閉塞病変の検出のために行われてきたが、他のモダリティと比較して、検査偽陽性のために十分な診断能を示すことができず、ガイドラインにおいても狭心症診断のための立ち位置が以前とは変わってきている。しかし、閉塞性冠動脈疾患がなくても冠微小血管機能障害(CMD)により心筋虚血が生じることがある。

目的

  本研究の目的は、非閉塞性冠動脈狭心症(ANOCA)患者において、冠動脈内皮非依存性および内皮依存性の微小血管機能を基準として、心筋虚血を検出する運動負荷心電図検査の特異性を評価することである。

方法

  ANOCA患者はアデノシンとアセチルコリンを用いた侵襲的冠動脈生理学的評価を受けた。CMDは内皮非依存性および/または内皮依存性の機能障害として定義された。ESTは標準的なBruceトレッドミルプロトコルを用いて行われ、虚血は心電図上のJ点から80msの位置に0.1mVのST降下が出現したこととした。この試験は91%の特異性を検出する検出力を有していた。

結果

  合計102例の患者が登録された(65%が女性、平均年齢60.8歳)。32例がEST中に虚血所見を呈し(虚血群)、70例は虚血所見を認めなかった(非虚血群)。EST中の虚血は100% CMDに特異的であった。Ach血流予備能は運動中の虚血の最も強い予測因子であった。内皮非依存性および内皮依存性の微小血管機能障害所見として用いると、ESTの偽陽性率は0%に低下した。

結論

ANOCA患者において、EST上の虚血は基礎にある微小血管障害に伴う虚血に対して極めて特異的であった。これらの結果は、ESTは偽陽性率が高いという従来の考えを覆すものである。

院内でのDiscussionは以下の通りでした。

・ANOCA症例を対象とする際、狭心症を有する患者が対象となっているが、無症状の不安定プラークを有する症例にどこまでの介入が必要となるのか。

・内皮機能が低下しているCMD症例が、急性冠症候群を来すような不安定プラークの原因となるか、また不安定化したプラークが心筋梗塞のイベントになるかがわかっておらず、今後CMD患者にどこまでの介入が必要になるかは不明である。

発表者:園田先生 文責:横井

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この記事を書いた人

【佐賀大学医学部循環器内科ドクター】

佐賀大学医学部循環器内科に勤務するドクターが、心臓にかかわる病気のよくある事例や予防をブログにて執筆しております。少しでも皆さんのお役にたちますように。

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