左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN)植え込み術【詳細説明】

目次

治療対象となる診断病名

長期間の抗凝固薬内服継続が必要な非弁膜症性心房細動

その医療行為を採用する理由,目的,必要性,有効性

 心房細動になると心房が収縮しなくなるため、左心房内に血栓ができやすくなり、脳梗塞(心原性塞栓)の原因となります。血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を内服して脳梗塞を予防する必要がありますが、血が止まりにくくなるため脳出血や消化管出血といった出血性合併症が起きてしまうことがあります。

 ”血栓のほとんどは、袋状になっている左心耳といわれる場所にできることが知られています。その左心耳に閉鎖デバイス(WATCHMAN)を挿入し、血液が鬱滞する部分を閉鎖することで脳梗塞を予防します。デバイスにより左心耳が閉鎖されれば、抗凝固薬を減量、もしくは中止、場合によっては抗血小板薬に変更することで、結果的には今後の出血リスクを減らすことができます。なお、左心耳を閉鎖することによる心機能の影響は基本的にはありません。

医療行為の具体的内容

  • 手術時間は約1~2時間です。全身麻酔下で行う手術です。口から胃カメラのようにエコーの機械を食道に挿入して(経食道心エコー)、心臓の近くからエコーで観察しながらデバイスを左心耳に留置します。
  •  右太ももの付け根(ソ径部)を消毒し、穿刺する血管に局所麻酔を行い、カテーテル(直径約5㎜の管)を血管内に挿入します。レントゲン透視を使いながらカテーテルを心臓内へ進め、所定の位置にカテーテルを留置します。右心房と左心房の間の心房中隔を針で刺して、左心房にカテーテルを挿入します。
  • 左心耳の造影を行い、左心耳に閉鎖デバイス(WATCHMAN)を留置します。
  • 適切に留置されていることを経食道心エコーで確認できたら、WATCHMANをカテーテルから切り離します。
  • 手術終了後、穿刺部の止血が確認できるまで、数時間の安静臥床が必要です。

医療行為に伴う危険性とその発生率,合併症の内容と頻度

 左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN)植え込みに伴う重篤な合併症が生じる頻度は1~2%です。下記のような様々な合併症により死亡に至る危険性がありますが、日本国内の臨床治験では手技関連の合併症と、手技に直接関連する死亡の発生はありませんでした。

  • 穿刺部位の合併症(出血、血腫、仮性動脈瘤、動静脈瘻)                                                 カテーテルの刺入部から再出血が生じたり、穿刺部に動脈瘤や動静脈の交通が生じることがあります。再圧迫が必要となり、安静時間が長引くことがあります。まれに外科的な修復術が必要となることがあります。
  • 薬物による副作用                                                                          術前及び術中に使用する薬物に対する薬剤の副作用が生じる可能性があります。抗生剤などによるアレルギーやアナフィラキシーショック、造影剤による腎機能障害の可能性があります。
  • 塞栓症 (0.3%)                                                                             心房細動になると心臓の中に、血栓(血の塊)が出来やすくなります。左心耳と呼ばれる部位に多く、術前に経食道心エコーでの確認を行いますが、手術中に小さな血栓が飛んでいき、脳梗塞や他臓器への塞栓症を引き起こす可能性があります。術中は血液をサラサラにする注射を併用します。術後もすぐには抗凝固薬を中止できません。
  • 心臓、血管の損傷(心タンポナーデ, 1.1%)                                              左心耳にWATCHMANを留置する際に、心臓から出血する可能性があります。心臓内の血液が漏れ出して心臓の周囲に貯まり、心臓を圧迫して機能障害を生じます。貯まった血液に対して管を挿入して抜く処置が必要となることがあります。まれに外科的な損傷の修復術が必要となることがあります。
  • デバイス脱落(0.24%)                                                            左心耳に留置したWATCHMANが外れてしまうことがあります。心臓の弁に引っかかたり、他の臓器に飛んでいくことがあり、場合によっては外科的手術が必要となります。    

                                                                                                       

 この治療は将来的に起こりうる脳卒中や大出血のリスクを低減するための「予防治療」ですが、薬物療法に比べると一時的に身体への負担とリスクがあり、この手技によって心臓を傷つけるなどの合併症が起こってしまう可能性があります。

 また、閉鎖デバイスの植え込み前後には、血栓の形成を防ぐために抗凝固療法を使用する必要があるほか、その後も患者さんの状態に応じて抗血栓薬を追加で使用する必要があります。この期間はそれぞれの薬の服用に伴う出血などのリスクが発生します。

 この予防治療によって得られる利点が、発生しうる欠点を上回ると判断される患者さんのみにこの治療が推奨されますが、そのバランスについて十分な説明を受けて理解した上でご判断いただけますようお願いいたします。ご不明な点があれば担当医がお答えしますので、遠慮なくお尋ねください。                                                                                                       

医療を行った場合の予後や改善の見込み、その程度

 左心耳に閉鎖デバイスを留置することで表面は、通常手技後1−2ヶ月で内皮化され始め、心臓の組織と一体化します。術後早期には閉鎖デバイスの表面に血栓が付着する可能性があるため、抗凝固療法を継続します。

 内皮化の速度は人により異なり、術後に経食道心エコー検査もしくはCTを行い、内皮化の程度や血栓が形成されていないか等を確認します。内皮化に問題がないことを確認し、抗血栓薬を減らしていきます。患者さんの状態、閉鎖デバイスの状態によって抗血栓薬を調整していきます。

 内皮化のスピードに問題があったり、血栓が見つかったりした場合には薬物の種類・切り替えのタイミング、検査の方法・タイミングが変更になる場合があります。

 最終的に閉鎖デバイスにより左心耳が閉鎖されれば脳梗塞予防になります。さらに抗血栓薬を調整することで、結果的には今後の出血リスクを減らすことができます。

代替的医療法がある場合には、その内容及び利害得失

 左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN)植え込みの代替治療としては外科的に左心耳の切除術(左心耳を切り取ること)、縫縮術(左心耳を縫い合わせて閉鎖すること)などにより、左心耳内での血栓形成を予防することができます。これらは、胸を開いて行う開胸手術、胸にあけた穴から手術器具を挿入して行う手術などがあります。また、従来の標準療法としての抗凝固療法がありますが、出血のリスクが高くなります。

医療を受けなかった場合に考えられる経過

 左心耳内に血栓が形成され脳梗塞を含めた塞栓症の危険性があります。また抗凝固薬を永続的に内服する必要性があり、出血の危険性もあります。

手術後に起こりうる症状とその際の対応

  抗血栓薬内服による出血が生じる場合があります。その場合は内服の減量および中止を検討します。

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