TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)の詳細な説明

・大動脈弁狭窄症の病態 

心臓の出口の逆流防止弁が硬く肥厚し、心臓からの血液の拍出を妨げています。そのため心臓に負担がかかり心臓の筋肉は肥厚し、次第に心臓の機能は低下します。軽度のうちは自覚症状がありませんが、重症になると失神や突然死に至る可能性もあります。

重症大動脈弁狭窄症に対する治療の第一選択は開胸、人工弁置換術の外科治療です。経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は、開胸手術が不可能な方、リスクが高い方に行います。また、解剖学的な適応(2尖弁、高度石灰化弁)でTAVIの適応外となる方もいます。透析の患者さんには、2023年より本邦でもTAVIが適応になりました。

TAVIのアプローチは、患者さん個人個人の病状等に合わせて、以下の選択肢から決定されます。

・医療行為の具体的内容

アプローチ部位によって異なりますが、経大腿アプローチでは局所麻酔・鎮静で手術を行います。麻酔の際、上腕や頸部・鼠径部から点滴、ペーシングの管を挿入します。他のアプローチでは、全身麻酔下に手術を行います。以後、以下のような手技を行いますが、アプローチ部位や個人の状態によってその手技は若干異なる場合があります。
基本的には心臓を止めることなく、人工心肺の機械も取り付けずに大動脈弁の留置が可能ですが、術中に回復の難しい急激な血圧低下、徐脈などが起こった場合には、足の付け根より簡易型の人工心肺(PCPS)を取り付けることもあります。また、下記のような合併症が起こった場合、開胸術(人工心肺使用手術も含む)、開腹術を行わなければならない場合もあります。       
  • 医療行為に伴う危険性とその発生率,合併症の内容と頻度
医療行為は常に危険を伴うものであります。予想外の事態によって病状が悪化する場合もあります。下記に示す合併症は当手術において起こりうる合併症です。手術死亡率:2-5%前後(日本TAVI関連学会からの2015年5月までの報告では30日死亡率は1.4%と報告されています。以下の合併症の%も同報告からの数値です。但し、患者さんの術前状態や合併症、例えば術前の血行動態、糖尿病の有無、呼吸障害の有無、腎機能障害の有無など、で危険率は増加します。) 
合併症:
・出血(血管損傷(6.4%)、心臓損傷(0.6%)や心室穿孔(0.9%)、弁輪部破裂(2.2%)、貧血の進行などにより輸血が必要になる場合もあります。)
・心室内伝道障害による徐脈などの不整脈(ペースメーカー植え込み(5.8%))
・循環補助装置(PCPS等)を必要とする心不全(1.4%)
・冠動脈閉塞症による冠動脈ステント留置(1.4%)人工弁塞栓、移動(再留置、開心術への移行の可能性あり)
・弁周囲逆流による大動脈弁閉鎖不全症血栓塞栓症 
・脳障害(脳梗塞、脳出血、1.2%)
・腸管虚血壊死(稀)
・下肢虚血(稀)
・心機能障害(周術期心筋梗塞、致死性不整脈、冠動脈攣縮(稀)心房細動などの不整脈)
・肺機能障害(抜管困難、気管切開)
・肝腎機能障害アレルギー
・心嚢液貯留
・胸水貯留感染症(創感染、肺炎、人工弁感染)など。
その他予期せぬ合併症が起こる可能性があります。また現在のところ、5年以上の遠隔成績が不明です。患者さんの術後状態によっては、心不全などの症状が残存する場合もあります。
  • 医療を行った場合の予後や改善の見込み、その程度
術後は可能であれば手術場で人工呼吸器から離脱し、集中治療室(ICU)に入室します。人工呼吸器管理が続く場合もありますが、通常術後数時間~術翌朝には人工呼吸器からの離脱を行います。ICU入室期間は1-2日前後が目安です。その後は一般病棟でリハビリを行い退院の準備をします。術後、心臓に負担がかかり継続的に点滴加療が必要になる場合もあります。退院は術後10日前後を目標としております。全身状態、創部の状態により、ICU入室期間、入院期間が延長する場合もあります。退院直後は、自宅で日常生活を行いながらリハビリを行って頂き一日でも早い日常社会生活復帰をめざします。術前の症状(呼吸困難、胸部違和感、失神、不整脈など)が消失し、心機能の回復を見込んで治療を行います。回復までの時間には個人差があります。また退院後は、術後1か月後、6か月後、1年後、以降1年毎に外来に来て頂きます。心臓エコー、レントゲン、心電図、採血等で定期的にチェックを行います。
  • 代替的医療法がある場合には、その内容及び利害得失
先述したように、以下のような代替的医療があり、それぞれに利点、欠点があります。個々の患者さんの状態を診て、治療の方針を選択しております。
  • 医療を受けなかった場合に考えられる経過
  • 手術後に起こりうる症状とその際の対応

創部の腫脹が継続することがありますが、3~6カ月程度で改善することが多いです。稀ですが、創部の治癒遅延、出血、浸出液などが起こることがあります。その際には、当科にすぐ連絡してください。また、残存する大動脈弁逆流の程度によっては、心臓に負担をかけ続ける場合もあり、利尿剤などの内服を継続して頂く場合があります。基本的には抗血小板剤を1剤は内服して頂きますが、出血の症状が起こる場合があります。術後はかかりつけ医での内服加療を継続して頂きますが、病状によっては当院へ受診して頂くこともあります。

患者さんの病状改善にお力添えができるよう、ハートチーム一同治療にあたらせて頂きます。ご質問等ありましたら、治療スタッフの方までお声掛けください。



画像提供:エドワーズライフサイエンス

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