静脈血栓塞栓症
静脈血栓塞栓症とは、主に足の静脈にできた血の塊(血栓)が、血流にのって肺の動脈に詰まる病気です。
血栓の場所によって、以下の2つに分けられます。
- 深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)
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足の静脈にできた血栓症
- 肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)
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肺の動脈に詰まった血栓症で、別名『エコノミークラス症候群』
なんらかの原因で血液が凝固(固まること)することで発症します。原因として、長時間同じ姿勢で脚を動かさないでいること(旅行や手術後など)、癌などの病気、避妊薬などが知られています。エコノミークラスでの長時間の飛行により起こりやすいので
『エコノミークラス症候群(旅行者血栓症)』
とも呼ばれています。
近年では、災害時の避難所生活や車内避難も、血栓症の引き金となる事が知られています。
深部静脈血栓症の症状
典型的な症状は、
- 足の痛み
- 足のむくみ・だるさ
- 足の皮膚の色の変化
です。
片足に症状が出ることが多いですが、両足に出ることもあります。また、血栓が小さい場合などは、自覚症状がないこともあります。
肺血栓塞栓症の症状
典型的な症状は、
- 突然の呼吸困難
- 突然の胸の痛み
- 動いたときの息切れ
- 意識を失う
です。
大きな血栓が肺の血管に詰まると、血流が遮断されて肺で血液に酸素を受け取ることができず、症状がでます。重症の場合は生命に関わる事があります。詰まった血栓が小さい場合などは、自覚症状がないこともあります。
静脈血栓塞栓症の検査
採血検査、超音波検査、C T検査などを行います。
深部静脈血栓症の場合、足の血栓を調べる下肢静脈超音波検査(エコー検査)や、血栓の程度を調べる血液検査などがあります。また、肺血栓塞栓症の場合は、血栓による肺の血管への影響を調べる心臓超音波検査(心エコー図検査)を追加します。全身の血栓の有無を評価するためには、造影剤を用いたCT検査などがあります。このような検査を、担当した医師が必要に応じて選択します。
治療方法
基本的には薬による治療です。必要に応じて追加処置を行います。
治療は、薬の使用が基本となります。新しい血栓の形成を予防する目的で、抗凝固薬(こうぎょうこやく)が使用されます。状態に応じて、内服や点滴の薬剤を、担当した医師が選択します。再発予防のためにも、最低でも数ヶ月間は十分な内服を行う必要があります。
これ以外に、血栓を溶かすための薬剤治療(血栓溶解療法)、足などにできた血栓が肺の血管へ移動することを防ぐ治療(下大静脈フィルター)、血管内の血栓を直接吸い出したり砕いたりする治療(カテーテル治療)などが、必要に応じて追加されます。これらの治療は、出血を起こす可能性や、血管を損傷する可能性もあり、追加は慎重に検討されます。
肺血管の血栓が多く、重篤な状況の場合には、外科手術で直接血栓を除去することもあります。
治療を入院して行うか否かは、様々な検査で、担当した医師が選択します。
予防方法
長時間の同じ姿勢を避けて、歩行・足首の運動・水分摂取を心がけましょう。
バスや新幹線などで長距離移動を行う場合や、避難所生活などでは、長時間同じ姿勢を取らないようにして、水分を適宜補いましょう。足首の曲げ伸ばしなどのマッサージも効果的です。