動悸を訴えて病院を受診する患者さんは多くいらっしゃいます。「突然鼓動が早くなる」「気付いたら脈が早くなっていた」「頭の中で心臓の鼓動が鳴る」「どくどくして胸がつかえた感じがする」「ゆっくりとドックン、ドックンとうつ」など表現は人それぞれ異なります。このように心臓(脈)が速く打つ、ゆっくり打つ、または不規則に打つ状態では「不整脈」である可能性が高いです。
しかし、不整脈と一口に言っても、治療を要する不整脈から、特別な治療を必要としない不整脈もあります。まずは不整脈の正体(病名)を知ることが大切です。
不整脈を診断する上での決め手は、心電図記録です。特に動悸など症状を自覚しているタイミングでの記録は診断への大きな近道です。ホルター心電計という24時間連続で記録できる心電図検査を受けていただくことで、不整脈を記録できる確率が上がります。しかし、それでも週に1回、月に1回の頻度でしか症状が出ない場合には、検査中に症状がでるとは限りません。そのような場合には7日間ホルター心電図や携帯心電計などを使用することも可能です。最近では心電図アプリケーションを備えたデバイスの普及により、症状時の心電図を記録できる機会が増えています。
では、不整脈にはどのような種類があるでしょうか?まず、心臓の心房側(上室)から出る不整脈と、心室側から出る不整脈に分けられます。心房側(上室)から生じる不整脈で一番頻度が多いものは「心房細動」です。心房が毎分400から600回の頻度で興奮した状態で、結果的には心房の動きはけいれん状態になってしまいます(細動)。(心房細動の話〜原因から治療まで。を参照)心不全や脳梗塞の原因となるため、早めの診断が重要です。必要ならばカテーテルアブレーション治療を行います。その他に「上室性期外収縮」「発作性上室頻拍」「心房頻拍」「心房粗動」があります。頻度や症状に応じて、薬物治療もしくはカテーテルアブレーション治療が必要になる場合もあります。
一方で、心室側を原因として出る不整脈には「心室期外収縮」や「心室頻拍」「心室細動」があります。心室は心臓のポンプ機能として働いているため、高頻度に興奮すると、心臓の拍出を十分に行うことができずに、めまいやふらつき、失神、最悪の場合は突然死に至る可能性もあります。薬物治療やアブレーション治療、突然死予防ためのデバイス治療が必要になるケースもあります。
不整脈の原因が、心房側なのか心室側なのか、治療の必要な不整脈なのか、治療は特に必要としない不整脈なのか、症状だけではわからない場合が多いです。不整脈の心電図記録を行うことが診断への近道です。お困りの際は医療機関を受診することをお勧めします。