Hulsmans et al., Science 381, 231–239 (2023)
心房細動は心房の収縮を妨げ、脳卒中や心不全を引き起こす。
本研究では免疫細胞と間質細胞が心房細動にどのように関与しているかを解明した。ヒト心房からの単一細胞トランスクリプトームから、心房細動における炎症性単球とSPP1+マクロファージの拡大が記録された。
高血圧、肥満、僧帽弁閉鎖不全症(HOMER)を組み合わせたマウスでは、心房が肥大し、線維化し、細動を起こしやすくなる。
HOMERマウスの心房から得られた単一細胞のトランスクリプトームは、実際の患者で観察された細胞組成とトランスクリプトームの変化を再現した。
単球の遊走を抑制すると、Ccr2- HOMERマウスでは不整脈が減少した。
細胞間相互作用解析により、SPP1は局所免疫細胞や間質細胞とのクロストークを通して心房細動を促進する多面的シグナルであることが同定された。
SPP1を欠失させるとHOMERマウスの心房細動は減少した。
これらの結果から、SPP1+マクロファージが心房細動における免疫療法の標的であることが同定された。
- 当院で採取した心房筋細胞の生検所見からはマクロファージは心房細動を引き起こす原因というよりも、浮腫の結果、破壊された心房筋を回収する機能ではないかと考えられている(論文発表済み)。
- 疾患モデルで作成したマウスと、60年以上生存した人間の心臓での心房筋細胞では異なる可能性があり、今後も研究が必要。
発表者 山口尊則、文責 横井