【論文解説】急性冠症候群(ACS)患者おける、残存狭窄はいつ治療すべきか?:段階的完全血行再建 vs 即時血行再建術【論文解説】

Immediate versus staged complete revascularisation in patients presenting with acute coronary syndrome and
multivessel coronary disease (BIOVASC): a prospective, open-label, non-inferiority, randomised trial

Lancet. 2023 Apr 8;401(10383):1172-1182.
doi: 10.1016/S0140-6736(23)00351-3. Epub 2023 Mar 5.

ACS症例における多枝病変を、『ACS治療時に完全血行再建を行うのか、待機的に完全血行再建を行うか』についての論文が取り上げられました。
ACSの残存狭窄をどのタイミングで介入するか、その適切な時期に関しては統一した見解はありません。

●方法
前向き非盲検非劣性無作為化試験
ベルギー、イタリア、オランダ、スペインの29の病院で実施。
対象は:ST上昇型心筋梗塞または非ST上昇型急性冠症候群を呈し、多枝性冠動脈疾患を有する18~85歳の患者
    責任病変が明確に同定できる患者
 ※多枝性冠動脈疾患の定義;2本以上の冠動脈の直径が2~5mm以上で70%以上の狭窄
患者を無作為に割り付け(1:1)し、即時完全血行再建術または段階的完全血行再建術を施行
主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、予定外の虚血性血行再建術、脳血管イベントの複合で、指標手技後1年時点で評価(全患者を対象にintention to treatで評価)
2%は即時血行再建に割付けられるも、血行再建できず。
●結果
2018年6月26日~2021年10月21日の間に、764例(年齢中央値65~7歳、男性598例[78%])を即時完全血行再建術群に、761例(年齢中央値65~3歳、男性589例[77%])を段階的完全血行再建術群に無作為に割り付け。3割が時間外の手技。
・主要転帰:即時完全血行再建群では764例中57例(7.6%)に、段階的完全血行再建群では761例中71例(9.4%)に発生した(HR 0-78、95%CI 0-55-1-11、非劣性=0-0011)
・ 全死因死亡: 即時血行再建術群と段階的完全血行再建術群で有意差なし(14例[1.9%] vs 9例[1.2%])
・心筋梗塞: 即時完全血行再建群で14例(1.9%)、段階的完全血行再建群で34例(4.5%)に発生(HR 0-41、95%CI 0-22-0-76、p=0-0045)。段階的完全血行再建群では即時完全血行再建群よりも予定外の虚血による血行再建術が多く施行(50例[6.7%] vs 31例[4.2%])
●解釈
急性冠症候群で多枝病変を有する患者において、即時完全血行再建術は主要複合アウトカムにおいて段階的完全血行再建術よりも非劣性で、心筋梗塞と計画外の血行再建の減少と関連。

発表後は以下のポイントに関して討議がなされました。
・CCSとACS自体の病態の違い
・ISCHEMIA試験以降のACSの扱いについて
・本試験の目的(即時の完全血行再建の妥当性を検討したいのか)
・ショック症例やCTOを除外しており、比較的シンプルな症例での検討である
・非責任病変は、血管造影がメインで評価されており、血管内イメージング施行率は低い。
・Staged groupの中で、3割は入院中にPCIをしている。
・時間外の手技の中で、どこまで介入を行うか(手技時間など)
・早期介入をすると、CABGという選択肢の検討ができなるなる可能性も。

                                    発表:園田先生    文責:吉岡

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