【論文解説】心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション後の経口抗凝固薬(OAC)療法継続をどう考えるか?

Oral anticoagulation after atrial fibrillation catheter ablation: benefits and risks
European Heart Journal, ehad798

今回の抄読会では心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション後の経口抗凝固薬(OAC)療法のリスクとベネフィットを評価した本邦の論文が取り上げられました。

 本研究では、CHADS2スコアによるOAC療法の継続状況、およびOAC療法の継続と血栓塞栓イベント・出血イベントとの関連を評価しています。

 2014年4月から2021年3月までにAFに対してカテーテルアブレーションを受けた患者の公的データを用いた後ろ向き研究です。AF再発のない患者を、アブレーションから6ヵ月後のOAC療法の継続により2群に分けています。主要アウトカムは6ヵ月後の血栓塞栓症と大出血です。背景の調整を行い、OAC継続と転帰の関連をCHADS2スコアに従って評価されています。

 結果ですが、対象患者231,374例中、CHADS2スコアはそれぞれ≤1: 69.7%、≤2: 21.6%、≥3: 8.7%。全体の71%が6ヵ月時点でOAC療法を継続していました。OAC継続率はCHADS2高得点群でCHADS2低得点群より高い割合でした。
 全患者中、血栓塞栓症は2451例(100人年当たり0.55例)、大出血は2367例(100人年当たり0.53例)。CHADS2スコア≦1群では、OAC継続群のハザード比は血栓塞栓症で0.86[95%信頼区間(CI):0.74-1.01、P = 0.06]、大出血で1.51(95%CI:1.27-1.80、P < 0.001)。CHADS2スコア≧3群では、OAC継続群のハザード比は血栓塞栓症で0.61(95%CI:0.46-0.82、P = 0.001)、大出血で1.05(95%CI:0.71-1.56、P = 0.81)。

本論文の結論として、『AFに対するカテーテルアブレーション後のOAC療法継続のベネフィットとリスクは患者のCHADS2スコアによって異なる』とし、CHADS2スコア次第でOAC継続のリスクがベネフィットが上回る可能性が示唆されています。

その後は以下のポイントで討議が行われました。
・このデータが実臨床に与える意義は。
・同じ3点でも、組み合わせによって違う結果なのか。
・そもそも、洞調律が維持された左房で血栓が形成されるのはなぜか?
・このデータで、予後がよく追えている。

                 発表者:山口尊則先生  文責:吉岡

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