【論文解説】左脚領域ペーシング(LBBAP)と両心室ペーシングの比較【論文解説】

Comparison of Left Bundle Branch Area Pacing and Biventricular Pacing in Candidates for Resynchronization Therapy
J Am Coll Cardiol.2023 Jul 18;82(3):228-241.

両心室ペーシング(BVP)を用いた心臓再同期療法(CRT)は、左室駆出率(LVEF)が低下し、心不全があり、QRSが広い、あるいは心室ペーシングの頻度が高いと予想される患者において、確立された治療法です。最近では、2017年頃から報告されじめた左脚領域ペーシング(LBBAP)が、BVPに代わる安全な治療法であることが示されています。本研究では、CRT施行患者においてBVPとLBBAPの臨床転帰を比較しています。

方法:
本観察研究では、2018年1月から2022年6月までに15の国際施設でCRTのクラスIまたはII適応で初めてBVPまたはLBBAPを受けたLVEF≦35%の患者を対象としています。主要アウトカムは、死亡または心不全入院(HFH)までの期間の複合エンドポイントと、副次的アウトカムは、死亡、HFH、心エコー図の変化です。

結果:
1,778人の患者が組み入れられ、 981例がBVP、797例がLBBAPでした。平均年齢は69±12歳、32%が女性、48%に冠動脈疾患があり、平均LVEFは27%±6%でした。LBBAPのペーシング波形のQRS時間はベースラインより有意に狭く(128±19ms vs 161±28ms;P<0.001)、BVPと比較しても有意に狭かった(144±23ms;P<0.001)。CRT後、LVEFはLBBAPで27%±6%から41%±13%(P<0.001)に改善したのに対し、BVPでは27%±7%から37%±12%(P<0.001)に増加し、ベースラインからの変化はLBBAPで有意に大い結果でした(13%±12% vs 10%±12%;P<0.001)。多変量回帰分析では、主要転帰はBVPと比較してLBBAPで有意に減少しています(20.8% vs 28%;HR:1.495;95%CI:1.213-1.842;P<0.001)。

本論文では、LBBAPはCRT適応患者においてBVPと比較して臨床転帰を改善し、BVPの妥当な代替となりうると結論づけています。

発表後は以下の内容で議論が行われました

・完全房室ブロックに対して右室ペーシングと左脚ペーシングの多施設前向き試験は見当たらないが、おそらく左脚ペーシングが予後が良いと予想されている可能性あり。
・今後右室ペーシング症例は減少し左脚ペーシング症例が増える可能性はある。

                     発表:金子先生   文責 坂井・吉岡

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