【論文解説】心不全や糖尿病がない心筋梗塞におけるダパグリフロジンの意義【論文解説】

Dapagliflozin in Myocardial Infarction without Diabetes or Heart Failure
NEJM Evid. 2024 Feb;3(2):EVIDoa2300286.

今回はNEJM Evidenceに掲載された、DAPA-MIの結果が共有されました。

心筋梗塞(MI)患者において、有害イベントのリスクをさらに低下させる治療法が求められています。
SGLT2阻害薬は、様々な心血管イベントのリスク低減が報告されています。MIにおいても、EMMY trialや韓国からの後ろ向き研究でも、バイオマーカーの改善・イベントリスク低下が報告されています。本研究は、MI急性期のSGLT2阻害薬導入を、前向き研究での評価を行なったものです。

本研究は無作為化二重盲検試験で、糖尿病または慢性心不全の既往がなく、急性心筋梗塞を発症し左室収縮機能が低下した患者を対象に、ダパグリフロジン10mgまたはプラセボを無作為に割り付け、1日1回投与されています。主要アウトカムは、死亡、心不全による入院、非致死的MI、心房細動/粗動、2型糖尿病、最終来院時のNYHA機能分類、最終来院時の5%以上の体重減少の階層的複合とされています。

結果としては、4017例が登録され、そのうち2019例がダパグリフロジンに、1998例がプラセボに割り付けられています。主要複合アウトカムの解析では、ダパグリフロジンのwin ratioがプラセボよりも有意に高かった。win ratioの結果は、イベント発生が少なかったため追加された心代謝系アウトカムによっていました。今回の検討では、安全性に関する懸念は認められていません。

本論文では『急性心筋梗塞患者において、ダパグリフロジン導入後約1年間で、複合アウトカムの改善に関して有意なメリットがあったが、心血管死または心不全による入院の複合項目にはプラセボと比較して影響はなかった。』と結論づけられています。

発表後の討議として
・想定していた700例以上のイベントは発生せず、100例強のイベント数であり、複合エンドポイントで評価されている。
・糖尿病や心不全など従来のSGLT2阻害薬の適応病態を有する対象で使うと早期導入するメリットは想定される。・EMPACT -MIでRESPONDERを絞り込める可能性がある。・早期介入のメリットとしてリモデリングが挙げられるのでエコーデータがあればより良かった。(EMMY trial でエコーデータは上げられているが、今回のtrialでlow risk 症例をターゲットとしているのとは違ってhigh risk 症例がターゲットになっている。)

発表 田中敦史先生   文責 吉岡、坂井(尾崎)

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