【論文解説】駆出率が維持された心不全患者(HFpEF)における呼吸筋力低下の有病率と予後

Prevalence and prognosis of respiratory muscle weakness in heart failure patients with preserved ejection fraction

Respir Med . 2020 Jan;161:105834. doi: 10.1016/j.rmed.2019.105834. Epub 2019 Nov 20.

背景

 駆出率低下型心不全(HFrEF)では呼吸筋力低下(RMW)が予後を予測することが知られているが、駆出率維持型心不全(HFpEF)ではRMWの有病率とその予後は不明である。われわれは、RMWがHFpEF患者の死亡率を予測するかどうかを検討することを目的とした。

方法

 連続した1023人の心不全患者(HFrEF 445人、HFpEF 578人)を対象に単施設観察研究を行った。退院時に呼吸筋力を評価するために最大吸気圧(PImax)を測定し、PImaxが予測値の70%未満をRMWと定義した。エンドポイントは退院後の全死因死亡率とし、エンドポイントに対するRMWの影響を検討した。

結果

 追跡期間中央値1.8年の間に134例(13.1%)が死亡し、このうち53例(11.9%)がHFrEF、81例(14.0%)がHFpEFであった。RMWは、HFrEF患者190例(42.7%)およびHFpEF患者226例(39.1%)で認められ、HFrEF(調整後ハザード比[HR]:2.13、95%信頼区間[CI]:1.17-3.88)およびHFpEF(調整後HR:2.85、95%CI:1.74-4.67)の両患者において、全死亡と独立して関連していた。多変量ロジスティック回帰モデルにRMWを追加することで、HFpEFでは全死亡に対するROC曲線下面積(AUC)が有意に増加したが(RMWを含むAUC:0.78、含まないAUC:0.74、P 1⁄4 0.026)、HFrEFでは増加しなかった(RMWを含むAUC:0.84、含まないAUC:0.82、P 1⁄4 0.132)。

結論

 RMWはHFpEF患者の39%に認められ、予後不良と独立して関連していた。予後に対するRMWの相加的効果はHFpEFでのみ検出され、HFrEFでは検出されなかった。

・院内で話し合われたことは以下の通りでした。

  • 呼吸筋が低下している症例では肺活量や1秒率等の呼吸機能自体が落ちており、呼吸器疾患の関与もあったのではないか。
  • 本研究結果から、呼吸筋が改善することで予後改善が確認されてはおらず、今後も研究が必要。この議論は昨今の貧血のある症例では心不全の予後が悪いが、貧血への介入により心不全の予後が改善するというデータが十分ではないのと同様。
  • 呼吸筋が低下している症例は、全身の骨格筋自体が低下していると思われ、より細かな検討が必要ではないか。

発表者 樗木先生、文責 横井

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