【総説解説】急性大動脈症候群(acute aortic syndrome:AAS)を再考する

Acute Aortic Syndrome Revisited 〜JACC State-of-the-Art Review〜

Isidre Vilacosta, MD, PhD, J. Alberto San Román, MD, PhD, Roberto di Bartolomeo, MD, PhD, Kim Eagle, MD, PhD, Anthony L. Estrera, MD, PhD,  Carlos Ferrera, MD, PhD, Shuichiro Kaji, MD, PhD, Christoph A. Nienaber, MD, PhD, Vicenç Riambau, MD, PhD, Hans-Joachim Schäfers, MD, PhD, Francisco J. Serrano, MD, PhD, Jae-Kwan Song, MD, PhD, Luis Maroto, MD, PhD

Journal of the American college of cardiology vol.78, No. 21, 2021

AASは急性大動脈解離及び大動脈瘤破裂・切迫破裂の総称です。AASについての総説(図説)を坂本先生が紹介しました。

AASの解剖・形態的分類、病理組織学的特徴、壁内血腫のCTと解剖学的所見、穿通性大動脈解離、偽腔を伴わない不完全解離について図による解説があります。AASは外科的・予後の観点から分類されることが多く、我々はStanford A、B、non-A、non-Bなどで分類しています。

疫学としては、スウェーデン、イギリスからの報告では、10万人あたり6-7.2人・10万人、アメリカミネソタ州からの報告では、10万人あたり7.7件とされています。男性が多く、年齢とともに増加、平均66-72歳、Stanford Aでは30-50%が自宅または病院到着前に死亡しており、院内死亡率は26%でした。

後半は、診断・治療についてですが、図5では、診断前の確率を上げるために、CT前にリスク・「大動脈痛」・身体所見を1段階目、心電図・胸部X線・トロポニン・D-ダイマーを用いた2段階目を経て3段階目のCTに到達する診断アルゴリズムが紹介されています。Dダイマーが1.6μg/ml以上でAASの可能性が高くなり、Dダイマーは陰性的中率が高い検査であるため、重要なポイントとなります。

以下、表1では臨床上の決定に影響を与える可能性がある画像所見、古典的解離のCT所見、古典的解離の急性血栓化、大動脈炎とのCT所見の違い、ULP(ulcer-like projection潰瘍性突出像)や壁内血液貯留などが紹介されています。図11ではCT所見を図示化し分類を示しています。

治療管理について、発症後24時間の超急性期は収縮期血圧100-120mmHg、脈拍60/分を目標に、疼痛コントロールを行う。Stanford Bであれば、大動脈径>44mm、偽腔径>22mm、 大きな近位部の裂孔、難治性疼痛、難治性高血圧ではTEVARを検討する必要があります。

最後に、AASの予防としては、遺伝的要因と環境要因が関与しており、家族歴がある場合、定期的な検査と遺伝子スクリーニング、高血圧症があれば血圧管理が最も重要となります。AAS進行の予防のためにはβ遮断薬、ACE阻害薬を初期段階から使用します。2018年に米国FDAから、フルオロキノロンの使用でAAS発症のリスク増加があるため、代替治療薬がある場合は避ける旨の勧告が出されています。

発表:坂本先生、文責:矢島

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次