【論文解説】難治性心室細動に対する治療戦略

Defibrillation Strategies for Refractoly Ventricular Fibrillation

Sheldon Cheskes, M.D., P.Richard Verbeek, M.D., Ian R.Drennan, A.C.P., Ph.D., Shelley L.McLeod, Ph.D., Linda Turner, Ph.D., Ruxandra Pinto, Ph.D., Michael Feldman, M.D., Ph.D., Matthew Davis, M.D., Christian Vaillancourt, M.D., Laurie J. Morrison, M.D., Paul Dorian, M.D., and Damon C.Scales, M.D., Ph.D.

NEJM, 2022 Nov. 387;21:1947-1956

院外心肺停止の場合、本邦では心肺蘇生処置を行いながらできるだけ早く医療施設へ搬送するという方針がとられますが、欧米の場合、搬送作業による心肺蘇生処置の質の低下を避けるため、ROSCを目指して現場で種々の処置を行う方針であり、蘇生処置の中止基準も設けられています。

今回の論文は、院外心停止の難治性心室細動に対してどのような除細動戦略を取るかということを検討したものです。

カナダでの6つの救急隊を対象に無作為化クラスタークロスオーバー試験が行われています。

院外心停止の18歳以上の患者において、CPR2分毎の標準的な除細動を3回施行後もリズム解析で心室細動か脈無し心室頻拍が確認されている症例を対象とし、パッドを右前胸部と左側胸部(心尖部付近)に装着する「標準除細動群」、左側胸部と左背側に装着する「VC(vector-change:ベクトル変更)除細動群」、標準装着とVC装着を合わせて計2セットのパッドを装着し、1回あたりの除細動タイミングにつき連続で2回の除細動を行う「DSED群」に分けて行われました。

コロナ禍で試験中止となるまでの間に、405例がエントリーし、136例が標準除細動群、144例がVC除細動群、125例がDSED群となりました。年齢の中央値は63.6歳、84.4%が男性でした。初回除細動までの時間と心肺蘇生処置に関する状況は3群ともに差はありませんでしたが、生存退院率は標準治療群に比べてDSED群が有意に高い結果となり、神経学的予後の改善に寄与していることが示唆されました。

Limitationとして、計画したサンプルサイズに達成しなかったこと、一定の経過観察期間を設けて評価したわけではなく入院期間も不明であること、DSED群は2台目の除細動器が必要でそれが可能な都市部でのエントリーであり一般化することが難しいこと、病院前の環境での評価であるため患者の医療的背景がわからず他に交絡因子が存在するかもしれないことなどが挙げられています。

フロアからの質問・コメントとして、今後、薬物使用などの循環器科的処置を含めて救急救命士行うことができる特定行為が増えることが院外停止症例の予後改善につながるかもしれないという意見が出ました。

発表:田栗先生  文責:矢島

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