【論文解説】心内血栓に対するDOAC使用は有効か否か

Off-label Use of Direct Oral Anticoagulants Compared With Warfarin for Left Ventricular Thrombi

Austin A. Robinson, MD; Cory R. Trankle, MD; Grayson Eubanks, MD; Christopher Schumann, MD; Paul Thompson, MD; Ryan L. Wallace, MD; Shouri Gottiparthi, BS; Benjamin Ruth, MD; Christopher M. Kramer, MD; Michael Salerno, MD, PhD, MS; Kenneth C. Bilchick, MD; Cody Deen, MD; Michael C. Kontos, MD; John Dent, MD, MS, MHCM

JAMA Cardiology, 2020 Jun.5;(6):685-692

左室内血栓に対する抗凝固療法中に出血性合併症を来した自身の症例をもとに、左室内血栓に対してDOAC使用が有効か否かについて坂井先生が紹介してくれました。

左室内血栓の原因は心筋梗塞が最も多いとされています。ESCのガイドラインでは、3〜6ヶ月のワルファリンでの抗凝固療法が推奨されています。現在、左室内血栓に対するDOAC使用は保険適応外です。

本論文では、左室内血栓を有する514例について、DOAC群(185例)とワルファリン群(300例)、経過中に薬剤を変更した群(64例)を後ろ向きに解析しています。

結果、平均年齢は58.4歳、患者背景として、人種、静脈血栓症、心房細動については、患者群間で統計学的有意差が見られました。経過観察期間(中間値351日)において、514例のうち、54例に脳梗塞もしくは全身性血栓症(SSE)を、31例に出血性合併症を認め、115例が死亡しました。Cox回帰分析を行うと、SSEはDOAC群で多く見られており、生存曲線もワルファリン群の方が予後が良い結果でした。結論として、左室内血栓に対するDOACの適応外使用は慎重に行うべきであるとされていました。

考察として、DOACは心房細動による血栓の予防・溶解を意図に開発された薬剤であり、心筋梗塞後の心内膜の変化を伴うような左室内血栓についての予防は困難なのではないか、とされています。また、左室内血栓が確認された症例の3分の1は経過観察の心エコーがされていないという背景があることから、本研究では塞栓症をエンドポイントとして解析したとのことです。

limitationとして、ワルファリン使用群のTTRが検討できていないことなどが挙げられます。

フロアからの質問・コメントとして、

・現在、DOACについては急性血栓肺塞栓症に対し初期導入時の高用量使用が可能になっているが、このような高用量の使用であると有効性が変わったりするのだろうか

・約500例のうち、10%程度にSSEが、20%程度が死亡というのは、比較的多い印象である

・症例数を増やした前向きのランダム化比較試験が期待される

などが出ました。

発表者:坂井先生, 文責:矢島

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