【論文解説】マイクロ・ナノプラスチックの、アテロームおよび心血管イベントへの影響は?

Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events
N Engl J Med. 2024 Mar 7;390(10):900-910.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2309822

マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)は、心血管疾患の危険因子である可能性が先行研究で示されています。しかし、このリスクがヒトにも及ぶという直接的なエビデンスは示されていません。本研究では、MNPsとアテローム・心血管イベントの関係を検討されています。

試験デザインですが、無症状の頸動脈疾患に対する頸動脈内膜剝離術を施行予定の患者を対象とした、前向き多施設共同観察研究です。頸動脈プラークの検体を、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法・安定同位体分析・電子顕微鏡検査で分析し、 MNPs の存在を評価されています。主要エンドポイントは、心筋梗塞・脳卒中・全死亡の複合とし、プラーク中に MNPs が確認された群と、確認されなかった群で比較されています。

304 例が登録され、追跡期間は平均33.7±6.9 ヵ月間でした。150 例(58.4%)の頸動脈プラークからポリエチレンが検出され、平均質量はプラーク 1 mg あたり 21.7±24.5 μg でした。31 例(12.1%)では、測定可能な量のポリ塩化ビニルも検出され、平均質量はプラーク 1 mg あたり 5.2±2.4 μg でした。電子顕微鏡検査では、異物粒子がプラークのマクロファージ中に視認できた。X 線分析では、これらの異物粒子の一部に塩素が含まれることが示されています。アテローム内に MNPs が検出された患者は,検出されなかった患者と比較して,主要エンドポイントイベントのリスクがい結果でした(ハザード比 4.53,95%信頼区間 2.00~10.27,P<0.001)。イベントとして、脳梗塞・心筋梗塞がMNPs群で多い傾向でした。

この研究では、頸動脈プラーク中に MNPs が検出された患者は、検出されなかった患者と比較して、追跡期間 34 ヵ月の時点での心筋梗塞・脳卒中・全死因死亡の複合リスクが高い結果でした。この領域に関しては、さらなる研究が望まれます。

                                      発表:枝吉先生   文責:吉岡

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