Management of Patients at Risk for and With Left Ventricular Thrombus: A Scientific Statement From the American Heart Association
Glenn N. Levine, MD, FAHA, Chair; John W. McEvoy, MB, BCh, BAO, MEHP, MHS, PhD, Vice Chair; James C. Fang, MD; Chinwe Ibeh, MD; Cian P. McCarthy, MB, BCh, BAO; Arunima Misra, MD; Zubair I. Shah, MD; Chetan Shenoy, MBBS, MS; Sarah A. Spinler, PharmD, FAHA; Srikanth Vallurupalli, MD; Gregory Y.H. Lip, MD; on behalf of the American Heart Association Council on Clinical Cardiology; Council on Cardiovascular and Stroke Nursing; and Stroke Council
Circulation. 2022 Oct.11;146:e205-e223
坂本先生が、AHAのステートメントのポイントを紹介してくれました。
・血栓形成の病態としては、虚血性・非虚血性(内膜障害)などに分かれる。
・画像評価は、塞栓症を発症しているが心エコー検出できない場合、心臓MRIも考慮する。
・心筋梗塞後の左室内血栓の予防については、まだ明確なエビデンスは出ていない。血栓形成リスク、出血リスク、患者の希望などの要因を考慮の上、抗凝固療法を検討する。心筋梗塞発症1ヶ月以内が最も血栓形成リスクが高く、その後、徐々に低下していくため、1−3ヶ月の継続が望ましい。
左室内血栓が形成された場合、塞栓発症のリスクが5.5倍になる。さらに、この血栓に対する治療を行わない場合は、10-15%のリスク上昇となる。隆起した可動性のある血栓は、不動性、石灰化、層状の血栓よりも塞栓症を起こしやすい。通常は3ヶ月間の抗凝固療法を継続し、画像診断により経過を見ていく。心筋梗塞後慢性期の血栓形成は3-6ヶ月の抗凝固療法を施行、以後の継続については患者・医療者間での話し合いの上で決定する。
・非虚血性心筋症での血栓予防について
たこつぼ型心筋症では、1.8%、2.2%という報告がある。心尖部のバルーニング症例や、トロポニンI 10ng/ml以上の症例で血栓リスクが高いとされる。
洞調律である症例の場合は、左室内血栓の一次予防の抗凝固療法を支持する研究はないが、たこつぼ型心筋症、左室緻密化障害、好酸球性心筋炎、周産期心筋症、心アミロイドーシスの場合は、考慮しても良い。EFが改善するか、出血の禁忌が生じない限り、無期限の継続を検討するべきで、少なくとも3-6ヶ月のワーファリンかDOACを使用する。EFが35%以上に改善した場合や、大出血の場合には中止を検討する。心尖部のakinesisやdyskinesis、悪性腫瘍や腎不全など炎症性疾患や過凝固状態にある場合に継続が望ましい。
・図5に予防・治療のフーチャートがまとめられている
・ワーファリン代替薬としてのDOACはエビデンスが少ないが、図4に、ワーファリンとDOACのメタ解析をまとめているが、この結果から、大きな遜色はないと考えられる。
・抗血小板療法を受けている患者においての経口抗凝固薬(OAC)使用については、3剤併用となるときは、1-4週の3剤併用療法後にOACは3財になるときは、1−4種の3財の後に、OACとP2Y12阻害薬の2剤の継続が望ましい。
・血栓予防のための抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は研究データが不十分でありエビデンスが少ない。
・線溶療法は推奨されない。
・外科的摘除については、データがまだ不十分で手術の危険性もあるため、抗凝固両方に耐えられない場合や、行っても塞栓症や心筋梗塞のリスクが高いと思われる場合などの稀な状況に限定されるべきである。
・大きい血栓や可動性がある血栓、隆起性の血栓では塞栓症のリスクが大きい。
・巨大なもしくは大量の血栓がある場合の治療については、データが不十分であり、集学的アプローチで対処するのが最善と考えられる。
・抗凝固療法を行っても、血栓が残存する場合は、OACの変更も検討する。壁在血栓や層状血栓で、特に組織化・石灰化している血栓の場合は、OAC中止も検討する。
発表:坂本先生、文責:矢島