【論文解説】気候変動が食糧システムと栄養に及ぼす影響は?:女性の心血管疾患リスクとの関連に注目して

Bucciarelli V, Moscucci F, Cocchi C, Nodari S, Sciomer S, Gallina S, Mattioli AV. Climate change versus Mediterranean diet: A hazardous struggle for the women’s heart.
Am Heart J Plus. 2024 Jul 29;45:100431. 

本論文は、気候変動が食糧システムと栄養に及ぼす影響、特に女性の心血管疾患リスクとの関連を、地中海食の意義とともに論じています。気候変動は作物の栄養素低下、水不足、極端気象による収穫不安定化を通じて、食の質を劣化させます。さらに大気汚染や重金属(カドミウム、水銀など)の蓄積が食品を介して人体に取り込まれることで酸化ストレスや炎症を助長し、動脈硬化や高血圧など心血管疾患の進展を促します。特に妊娠女性では胎盤通過による妊娠高血圧症候群リスクも指摘されています。

女性は家庭や農業において食の生産・準備を担う割合が高く、またホルモン変動による代謝特性や食行動の違いも存在するため、気候変動の影響をより大きく受けやすいとされています。実際、発展途上国では女性が食糧生産の大半を担う一方で、栄養確保において社会的制約を受けやすく、貧困や文化的役割分担が食習慣に影響を及ぼしています。

一方、地中海食は果物・野菜・豆類・魚・オリーブ油を主体とし、肉類や乳製品を控える食事パターンで、心血管疾患予防効果が確立しています。大規模前向きコホートやメタ解析により、女性においても冠動脈疾患や心血管死のリスクを2~3割低減させることが示されています。また炎症や酸化ストレス関連遺伝子の発現にも性差があることが報告され、女性に特化した食事療法の可能性が注目されています。さらに、地中海食は動物性食品の少ない持続可能な食事とされ、環境負荷低減にも寄与する一方で、気候変動によるオリーブ・ブドウ・魚介類など主要食材の生産不安定化が大きな脅威となっています。

このような状況に対し、気候変動に適応した農業(耐乾燥性作物、効率的灌漑、土壌保全、持続的漁業など)を推進することが食料安全保障と心血管予防に直結すると考えられます。また女性の社会的役割や文化的背景を踏まえた介入も重要です。教育プログラム、地域での栄養支援、職場での健康的食事提供、医療者による個別栄養指導、メディアを通じたボディイメージの是正など、多層的な取り組みが必要です。さらにAIを用いた不適切な画像操作が女性の食行動や心身に悪影響を与える点も指摘され、倫理的規制と正しい情報発信が求められます。

結論として、気候変動は女性の心血管リスクを多方面から増大させており、これに対抗するには食の質の改善と持続可能性を両立させる包括的戦略が不可欠です。政策決定者・医療者・農業分野が連携し、教育と研究、啓発活動を組み合わせた統合的アプローチにより、女性の健康と地球環境を同時に守ることが可能であると論じられています。

           

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