Jastrzębski M, Kiełbasa G, Cano O, Curila K, Zanon F, Pestrea C, De Pooter J, Luermans J, Rademakers LM, Žižek D, Grieco D, Huybrechts W, Krisai P, Whinnett ZI, Moskal P, Valiton V, Navarrete-Navarro J, Stros P, Deluca F, Cicala E, Özpak E, Vernooy K, Burri H. Left bundle branch area pacing vs right ventricular pacing for atrioventricular block: the MELOS RELOADED study. Eur Heart J. 2025 Sep 22:ehaf699. doi: 10.1093/eurheartj/ehaf699. Epub ahead of print. PMID: 40977097.
本研究は、房室ブロック(atrioventricular block:AVB)患者における最適な心室ペーシング様式を検討することを目的として実施された、多施設共同・後ろ向きレジストリ研究です。右室ペーシング(right ventricular pacing:RVP)は従来から広く用いられてきましたが、非生理的な心室興奮による心機能低下や予後悪化が問題とされてきました。左脚枝領域ペーシング(left bundle branch area pacing:LBBAP)は、より生理的な左室同期収縮をもたらす新しいペーシング法として注目されていますが、長期予後、とくに死亡率への影響は十分に検証されていませんでした。
MELOS RELOADED研究は、欧州14施設からなるMELOSグループにより実施され、左室駆出率(LVEF)40%超で、心室ペーシング率20%以上を要するAVB患者を対象としています。LBBAPを施行された患者と、同一施設でLBBAP導入以前にRVPを施行された患者を比較対象とし、傾向スコアマッチング(1:1)により背景因子を調整したうえで解析が行われました。主要評価項目は全死亡であり、副次評価項目として心不全入院およびCRTアップグレードの複合エンドポイント、ペーシングパラメータ、合併症が設定されました。
最終的に3382例(LBBAP群1691例、RVP群1691例)が解析対象となりました。平均年齢は約76歳で、男女比や併存疾患、LVEFなどの背景因子はマッチング後に両群で良好に均衡していました。追跡期間中央値はLBBAP群で約2.2年、RVP群で約4.0年でしたが、生存解析は4年時点で打ち切って評価されています。
主要評価項目である全死亡について、4年時点のKaplan–Meier解析では、LBBAP群はRVP群と比較して11.8%の絶対的生存率改善を示しました(P<0.001)。多変量Cox回帰分析においても、LBBAPは死亡リスクを有意に低下させる独立因子であり、ハザード比は0.53(95%信頼区間 0.42–0.65)でした。この効果は植込み後比較的早期から認められ、LBBAPがAVB患者の長期予後を改善しうることが示されました。
副次評価項目においても、LBBAP群は心不全入院およびCRTアップグレードの複合エンドポイント発生率が有意に低く、4年時点での絶対差は6.8%でした。ペーシング閾値や合併症発生率は両群で同等であり、LBBAPは安全性の面でもRVPと遜色ないことが確認されました。
さらに本研究の重要な知見として、LBBAP群内での予後規定因子解析が行われました。その結果、**左脚枝捕捉が確認されていない左室中隔ペーシング(LVSP)**は、左脚枝ペーシング(LBBP)と比較して死亡リスクが有意に高く(HR 1.85)、LBBAP施行時には左脚枝捕捉を確実に確認することの重要性が示されました。また、高齢、心室ペーシング率が低いことも予後不良因子として同定されました。
以上より、本研究は、LVEFが保たれた、あるいは軽度低下したAVB患者において、LBBAPがRVPに比べて明確な長期生存利益をもたらすことを初めて大規模に示した研究です。無作為化比較試験の結果を待つ必要はあるものの、現時点においてLBBAPはAVB患者に対する第一選択となり得るペーシング戦略であり、特に左脚枝捕捉の確認を重視した適切な手技が臨床成績向上に不可欠であると考えられます。
