【論文解説】安定冠動脈疾患に対して、β遮断薬のリスク低減効果は?

Association of Beta-Blocker Therapy With Cardiovascular Outcomes in Patients With Stable Ischemic Heart Disease
J Am Coll Cardiol. 2023 Jun 20;81(24):2299-2311.

βブロッカーのACS(急性冠症候群)にん対するエビデンスはすでに確立しています。安定冠動脈疾患(CAD)においては、症状改善目的のβブロッカー導入は、各国ガイドラインで推奨されています。しかし、これまでの研究では、安定冠動脈疾患(CAD)患者におけるβ遮断薬の心保護効果を示されていません。本研究では、CAD患者におけるβ遮断薬と心血管イベントとの関連を評価しています。

方法ですが、2009~2019年にカナダのオンタリオ州で待機的冠動脈造影を受けた66歳を超える患者で、閉塞性CADと診断された全例が対象です。心不全や1年以内の心筋梗塞の症例、CAG前年にβ遮断薬を使用された症例などは除外されています。β遮断薬の使用は、指標となる冠動脈造影の前後90日間に、少なくとも1回のβ遮断薬処方請求があることと定義されています。主要アウトカムは全死亡と心不全または心筋梗塞による入院の複合とされ、交絡を考慮するために、傾向スコアを用いた治療の逆確率加重が用いられています。

28,039例(平均年齢:73.0±5.6歳;男性66.2%)が解析対象となり、そのうち12,695例(45.3%)が新たにβ遮断薬を処方されています。β遮断薬の内訳はビソブロロール66% メトプロ27.8%。主要アウトカムの5年リスクはβ遮断薬群で14.3%、非投与群で16.1%でした(絶対リスク減少:-1.8%;95%CI:-2.8~-0.8;HR:0.92;95%CI:0.86~0.98;P = 0.006)。この結果は、心筋梗塞による入院の減少(HR:0.87、95%CI:0.77-0.99、P = 0.031)によってもたらされています。一方で全死亡や心不全入院では差は認められませんでした。

心不全や最近の心筋梗塞を伴わない血管造影上安定したCAD患者において、β遮断薬は5年後の心血管イベントをわずかではあるが有意に減少させたと結論づけています。

発表後は、以下のようなポイントで質疑が行われました
・β遮断薬の順守状況
・β遮断薬以外の内服の状況(特にスタチン等は全コホートで優位差があり、マッチングされているとはいえ、影響はあったのか)・
・他の心保護薬の影響
・直近のNEJMでのEFが保たれたMIでの結果との違いは

発表:嘉村先生     文責:吉岡

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次