Kim D, Shim J, Choi E, et al. Long-Term Anticoagulation Discontinuation After Catheter Ablation for Atrial Fibrillation: The ALONE-AF Randomized Clinical Trial. JAMA. Published online August 31, 2025. doi:10.1001/jama.2025.14679
心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーションは、洞調律維持や生活の質改善において抗不整脈薬治療を上回る有効性を示すことが知られています。しかし、長期的な抗凝固療法の必要性については、これまで前向き無作為化試験による十分なエビデンスがなく、実臨床ではアブレーション後も脳塞栓リスク因子を有する患者に対して経口抗凝固薬(OAC)の継続が推奨されてきました。一方で、OACは出血リスクを伴うため、その中止が可能かどうかは臨床上大きな関心事です。
この背景のもと実施されたのが、**ALONE-AF試験(Anticoagulation One year after Ablation of Atrial Fibrillation)**です。本試験は、少なくとも1年間再発性心房性不整脈を認めないアブレーション後のAF患者において、OACを継続する群と中止する群を比較した多施設共同無作為化比較試験です。
試験デザイン
- 対象: 19〜80歳、CHA₂DS₂-VAScスコアで少なくとも1つの非性別リスク因子を有し、アブレーション後1年以上再発を認めなかったAF患者。
- 登録数: 840例(2020年7月〜2023年3月、韓国18施設)。
- 介入:
- 継続群:DOAC(アピキサバンまたはリバーロキサバン)投与を継続(423例)
- 中止群:OAC中止(417例)
- 主要評価項目: 2年間の「脳卒中・全身性塞栓症・大出血」の複合エンドポイント。
- 副次評価項目: 個別イベント(虚血性脳卒中、TIA、大出血、臨床的に重要な非大出血、全死亡、入院など)。
結果
平均年齢は64歳、女性24.9%、発作性AFが67.6%、平均CHA₂DS₂-VAScスコアは2.1でした。観察期間中央値は2年です。
- 主要複合アウトカム:
- 中止群:1例(0.3%)
- 継続群:8例(2.2%)
- 絶対差 −1.9%ポイント(95%CI: −3.5 ~ −0.3、p=0.02)
→ 中止群で有意にイベントが少ない結果でした。
- 虚血性脳卒中: 中止群0.3% vs 継続群0.8%(有意差なし)。
- 大出血: 中止群0% vs 継続群1.4%(p=0.03)。
- TIA: 中止群2例 vs 継続群0例(有意差なし)。
- 全死亡・心筋梗塞: 両群とも発生なし。
- 再発AF: 中止群9.6%、継続群8.7%と同等。
これらの結果から、イベント抑制効果は主に「大出血減少」によってもたらされたことが明らかになりました。
考察
本試験は、アブレーション後に不整脈再発を認めないAF患者において、OAC継続が必ずしも必要ではないことを初めて無作為化比較で示した点が重要です。従来の観察研究やレジストリ解析でもOAC中止後の塞栓症リスクは比較的低いと報告されていましたが、今回のRCTでその知見が裏付けられた形です。特に大出血リスク低減が顕著であり、臨床的には「出血高リスク患者では中止を積極的に検討できる」ことを示唆します。
一方で、試験にはいくつかの限界があります。第一に、主要評価項目の絶対的イベント数は想定よりも少なく、特に高リスク群(CHA₂DS₂-VASc ≥4)の症例数が限られていたため、極めて高リスク患者への外挿には注意が必要です。第二に、対象が主に東アジア人であり、欧米集団への一般化可能性は限定的です。第三に、イベント評価は複合エンドポイントであり、虚血イベントの低頻度に比して出血イベントの影響が強調される可能性があります。
臨床的意義
本試験は、アブレーション成功後1年以上経過し再発がない中等度リスクAF患者において、OAC中止が安全であることを支持する最初の無作為化比較試験です。これにより、ガイドラインの「原則としてOAC継続」を再検討する余地が生じました。今後は高リスク群や欧米集団における検証が求められますが、本試験の結果は出血リスクと塞栓リスクのバランスを踏まえた抗凝固療法の個別化に大きく寄与するものと考えられます
