尿酸値が高いと言われたら…原因と放置のリスク、今すぐできる生活改善
こんにちは。循環器内科医として、日々多くの患者さんと向き合う中で、「健康診断で尿酸値が高いと指摘されました」という相談をよく受けます。尿酸値が高い状態(いわゆる「高尿酸血症」)は、放っておくと痛風だけでなく、心臓や血管にも悪影響を及ぼすことがあるため、早期に生活習慣を見直すことがとても大切です。

今回は、尿酸値が高くなる原因から、そこから引き起こされる健康障害、そして今日からできる生活習慣の改善方法まで、わかりやすくご紹介します。
①尿酸値が高くなる原因とは?
尿酸は、体内の「プリン体」という物質が分解されることで作られる老廃物の一種です。プリン体は、食べ物(特に肉類や魚介類、アルコールなど)に含まれており、また私たちの体内でも自然に生成されます。
通常、尿酸は血液中に溶けており、腎臓から尿として排出されます。しかし、以下のような理由で血液中に尿酸が溜まりやすくなると、「高尿酸血症」となります。
- 尿酸の産生が増える: プリン体を多く含む食品の摂りすぎ(レバー、ビール、エビなど)、肥満、過度な運動やストレスによる細胞の代謝亢進など。
- 尿酸の排泄が低下する: 腎機能の低下、水分摂取不足、アルコールの過剰摂取など。
特に現代人に多いのは、「尿酸の排泄がうまくいっていない」タイプです。汗をかいても水分を補給しない、食生活が乱れている、運動不足、ストレスフルな生活を送っているといった生活習慣が、尿酸値をじわじわと押し上げてしまいます。
②尿酸値が高いことで起こる健康障害とは?
「尿酸値が高い=痛風」と思われがちですが、実はそれだけではありません。高尿酸血症がもたらすリスクは多岐にわたります。

●痛風(つうふう)
最も有名なのがこの「痛風発作」です。関節内に尿酸が結晶化して炎症を起こし、特に足の親指の付け根などが激しく腫れて強烈な痛みが生じます。「風が吹いただけでも痛い」と表現されるほどの激痛です。
●尿路結石
尿酸が尿の中で結晶化してできる「尿酸結石」は、腎臓や尿管にできて激しい腹痛や血尿を引き起こすことがあります。
●腎機能障害
尿酸値が高い状態が続くと、腎臓に負担がかかり、慢性腎臓病のリスクが高まります。さらに、腎機能が低下すると、尿酸の排出力が下がり、悪循環に陥ります。
●動脈硬化・心血管疾患
近年の研究では、尿酸が高いと血管内皮の機能が悪化し、動脈硬化が進みやすくなることがわかってきました。その結果、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などの心血管系の疾患リスクも上昇する可能性があります。
③改善すべき生活習慣:今日から始められる5つのポイント
尿酸値を下げるには、薬に頼る前にまずは生活習慣を見直すことが基本です。以下の5つを意識してみてください。
1. 水分をしっかり摂る
水を飲むことで尿酸が尿に溶けやすくなり、体外に排出されやすくなります。カフェインやアルコールを含まない水や麦茶がおすすめです。
2. プリン体の多い食品を控える
レバーや白子、あん肝、干物、ビールなどはプリン体が多いため、摂取を控えましょう。とはいえ、完全に避ける必要はなく、量を意識することが大切です。
3. アルコールは控えめに(特にビール)
アルコール自体が尿酸の排出を妨げます。さらにビールにはプリン体が多く含まれているため、特に注意が必要です。「プリン体ゼロ」の表示でもアルコールである限り、リスクは残ります。
4. 体重を適正にコントロールする
肥満は尿酸値の上昇に直結します。週2〜3回の有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギングなど)を続けることが効果的です。
5. 野菜や海藻類を積極的に
カリウムや食物繊維が豊富な食事は、尿酸の排出を助けます。ほうれん草やキャベツ、わかめ、ひじきなどを日々のメニューに取り入れましょう。
おわりに:放置せず、未来の健康を守る第一歩を
尿酸値の高さは、症状がないうちは見過ごされがちですが、静かに体を蝕む「サイレントリスク」です。健康診断で異常を指摘されたら、「様子を見る」ではなく、ぜひ今回ご紹介した生活習慣の改善から始めてみてください。
それでも改善が見られない場合は、早めに内科や循環器内科に相談しましょう。医師と二人三脚で、無理なく尿酸値をコントロールしていくことが、将来の自分を守ることにつながります。