【論文解説】ST上昇型急性心筋梗塞に対する経皮的冠動脈インターベンションにおいて、ステント拡張の程度が微小血管障害や予後に与える影響:冠動脈生理学と血管内超音波からの検討

Microvascular and Prognostic Effect in Lesions With Different Stent Expansion During Primary PCI for STEMI: Insights From Coronary Physiology and Intravascular Ultrasound

Xida Li, Shuo Sun, Demou Luo, Xing Yang, Jingguang Ye, Xiaosheng Guo, Shenghui Xu, Boyu Sun, Youti Zhang, Jianfang Luo, Yingling Zhou, Shengxian Tu and Haojian Dong

Front Cardiovasc Med. 2022 Mar 9;9:816387. doi: 10.3389

背景:ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による冠動脈内へのステント留置は、閉塞した冠動脈の再灌流を得られるが、同時に遠位部塞栓を引き起こす可能性がある。

この研究ではSTEMI症例でのステント拡張の程度と末梢微小血管障害との関連を調べている。

方法:先行する多施設共同前向きコホート研究のSTEMI症例で血栓量の多い症例 87例をポストホック解析した。血管造影から定量的血流比(QFR)と微小循環抵抗(MR)から末梢血管障害の程度を評価し、また血管内超音波(IVUS)所見から、ステント拡張を評価した。患者はステント拡張の程度により、過拡張(100%以上)、至適拡張(80-100%)、拡張不良(80%未満)の3サブグループに分類され、治療後12ヵ月間フォローアップされた。主要評価項目は,MACE(心臓突然死,心筋梗塞,脳卒中,予期せぬ入院または予定外の再灌流,および全死因死亡)とした。

結果:ステントの拡張度は全例平均82%、過拡張群で117%、至適拡張群88%、拡張不良群75%であった。ステント全体の拡張は治療後のQFRとMRには影響しなかったが、血流速は低下した(p=0.02)。ステント拡張不全と過拡張はQFR、MR、血流速には影響しなかった。多変量Cox解析では、過剰拡張はno-reflow(HR = 1.27, p = 0.02)とMACE(HR = 1.45, p = 0.007)の独立した危険因子であることが示された。サブグループ解析によると、70%-80%の軽度の拡張不良はMACEとno-reflowのリスク因子ではなかったが、70%未満のステント拡張不良はMACE(HR = 1.36, p = 0.04)が増加することが示された。

結論:ステント拡張の程度は最終的なQFRとMRには影響しないが、血流速を低下させる。ステントの拡張は、70-80%のステント拡張不良については、至適なステント拡張と比較して、予後は非劣性であるが、70%未満の拡張不良と100%以上のステント過膨張は,MACEやno-reflowイベントの独立したリスクとなるため,避けるべきとした。

 演者からのメッセージとしては、STEMI症例において、ステント拡張が70%未満の拡張不良と100%以上過拡張は可能な限り避けるべき、という結論でした。

 この論文に対して、院内で下記のようなDiscussionが行われました。

・ステント拡張の指標について、本研究でも使用されているステント遠位端と近位端の血管内腔面積の平均値と最小ステント面積から算出したステント拡張程度の指標の、血管自体の面積とステント内腔系の比(MSA/VA)などの新たな指標の有用性が言われている。

・急性心筋梗塞におけるステント拡張により末梢循環障害を生じる機序について。

・近年での血栓吸引・末梢保護デバイス・末梢循環改善薬の使用の立ち位置。

発表者 園田先生、文責 横井

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次