【論文解説】遺伝子リスクスコア(Polygenic risk score; PRS)を用いた心房細動の発症予測

A polygenic risk score predicts atrial fibrillation in cardiovascular disease.
Eur Heart J. 2022 Aug 18
Marston NA, Garfinkel AC, Kamanu FK, Melloni GM, Roselli C, Jarolim P, Berg DD, Bhatt DL, Bonaca MP, Cannon CP, Giugliano RP, O’Donoghue ML, Raz I, Scirica BM, Braunwald E, Morrow DA, Ellinor PT, Lubitz SA, Sabatine MS, Ruff CT.

多遺伝子リスクスコア(Polygenic risk score)を従来の臨床予測因子(CHARGE-AF score)と、バイオマーカー予測因子(NT-proBNP>450pg/ml)に加えることで心房細動の発症予測を向上させるかどうかを調べた試験。

4つのTIMI試験から、心房細動の既往のない36,662人の被験者を解析。被験者は、心房細動の遺伝子リスクスコア(PRS)を用いて五分位に分けられた。AFの有効な多遺伝子リスクスコア(PRS)を用いて五分位に分類した。心房細動の臨床的リスクはCHARGE-AFスコアで計算した。


PRSの追加により、臨床的リスクやNT-proBNPと比較して予測値が改善されるかどうかを判定した。


3年の間に1018例の心房細動が新たに発生した。AF PRSは心房細動の発症を有意に予測し、PRSが1SD上昇するごとにリスクが40%上昇した[HR:1.40(1.32-1.49);P<0.001]。心房細動のPRSが高い人(上位20%)は、心房細動のリスクが2倍以上高かった。[HR 2.45(1.99-3.03),P<0.001].さらに、PRSはCHARGE-AFの臨床的リスクスコアに加え、さらに段階的なリスク層別化が可能で、3年間の発症率は1.3%から8.7%となっている。臨床的・遺伝的リスクの低い患者の3年発症率は1.3%で、一方で臨床的・遺伝的リスクの高い患者の3年発症率は8.7%だった。高臨床的リスクスコア、高PRS、NT-proBNP上昇のサブグループでは、3年間のAFリスクは16.7%であった。CHARGE-AF臨床リスクスコア単独でのC-indexは0.65であったが、NT-proBNPの追加により0.67に改善した(P < 0.001)。さらにPRSを加えると0.70(P<0.001)まで増加した。

心血管系疾患を有する患者において、AF PRSは、臨床リスクスコアおよびNT-proBNPに追加することにより、心房細動の発生を予測する強力な独立した因子となる。

<カンファレンスでのディスカッション>

・現在進行中のFUTURE AF Studyにより日本人の心房細動PRSを社会実装するためのエビデンスが構築されることを期待。今後心房細動に留まらず、循環器疾患全体によるゲノム治療が進歩すると思われる。より大規模な前向き臨床研究が必要。

・さらに得られたエビデンスを実臨床で活用するためには、医学界を超えた連携協力が必要となると思われる。

発表・文責:大坪

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