【論文解説】NT-proBNPが正常範囲のHeart failure with preserved ejection fraction (HFpEF)に関する検討

Heart failure with preserved ejection fraction in patients with normal natriuretic peptide levels is associated with increased morbidity and mortality
European Heart Journal, ehab911
Frederik H. Verbrugge, Kazunori Omote, Yogesh N. V. Reddy, Hidemi Sorimachi, Masaru Obokata, Barry A. Borlaug

2022年に発表された論文です。

心不全は何らかの心機能低下を有する病態を総称したものです。そのうち、Heart failure with preserved ejection fraction (HFpEF)はLVEFが保たれた心不全のカテゴリーです。その診断基準に用いられるのがNT-proBNPで、各国のガイドラインにも記載されています。心不全と診断される症例の中にはNT-proBNPが低い症例も存在することが知られており、肥満・インスリン抵抗性・人種などが要因として知られています。
本論文では、血行動態から心不全と診断された症例の中で、NT-proBNP正常群の背景・運動負荷での右心カテーテル検査の数値・そして予後を、NT-proBNP上昇群等と比較検討しています。

右心カテーテル検査を施行した方を対象に、血行動態より心不全の診断基準を規定しています。ここではLVEF50%未満の症例は除外されています。
国内ガイドラインではNT-proBNPのカットオフは400ですが、本論文では125をカットオフとしています。

NT-proBNP正常+HFpEF群は対称群と比較して年齢が若く、BMIが高く、心内圧が高く、拡張能が低下していました。
対してNT-proBNP上昇+HFpEF群は心筋重量が重く、右室リモデリングが進んでおり、中等度以上の弁膜症も多い結果でした。
死亡イベントに関しては、NT-proBNP正常+HFpEF群は非心不全群と比較して死亡リスクが高く、心不全再入院率も同様に高い結果でした。

本論文の結果をうけて、NT-proBNP正常でもHFpEFの血行動態を呈することはあり、息切れ等の症状がある場合には、バイオマーカーでの除外は困難だと感じます。特に有害心イベントも少なくないため、悩ましい症例では運動負荷での評価(心エコーなど)での評価を積極的に行う必要があると考えられます。

質疑応答では、以下のような点に関して討議が行われました。
①AFを含む場合は、結果の判断が難しくなるため注意が必要。
②NT-proBNPの分泌量の差の理由は何か。
③肥満の影響を受けてNT-proBNPは変動するならば、他の指標の再検討も必要ではないのか。
④遺伝的な素因の検討も必要。

発表者:兼田先生、 文責:吉岡

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