【論文解説】HOCMに対するコハク酸メトプロロールの効果

Randomized Trial of Metoprolol in Patients With Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy

Anne M. Dybro, MD,a,b Torsten B. Rasmussen, MD, PHD,a,b Roni R. Nielsen, MD, PHD,a,b Mads J. Andersen, MD, PHD,a Morten K. Jensen, MD, PHD,a Steen H. Poulsen, MD, DMSCIa

JACC, 2021 Jul.78;(25):2505-2517

閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者において、二重盲検プラセボ対照無作為化クロスオーバー試験でメトプロロールの効果を検討した論文です。本邦で認可されているのは酒石酸メトプロロールで、本試験では、世界的に幅広く使用されている長時間型のコハク酸メトプロロールを用いています。

患者は、元々の治療を中断する2週間のwash out期間を経て、2週間のプラセボもしくはメトプロロール投与群に分かれた試験期間に入ります。その後1週間のwash out期間を経て、再度無作為化されて2週間の試験期間となります。

結果、プラセボ投与期と比較してメトプロロール投与期に左室流出路の圧較差が低下しました(安静時:25mmHg vs. 72mmHg、P=0.007、最大運動時:28mmHg vs. 62mmHg、P<0.001、運動後:45mmHg vs. 115mmHg、P<0.0001)。NYHAがⅢ度以上を示した患者の割合は、メトプロロール投与期で14%、プラセボ投与期で38%と有意差を認めました。KCCQ-QSSスコアについてもメトプロロール投与期の方が高い結果でした(76.2点 vs. 73.8点、P=0.039)。しかしながら、運動時の最大運動耐容能とpeakVO2に改善は見られず、メトプロロールの徐拍化作用により効果が相殺されたものと考察されています。

本邦のガイドラインにおいては、「非血管拡張性β遮断薬の安静時および誘発性左室流出路閉塞に伴う症状の改善を目的とした投与」がclassⅠとなっており、実臨床ではビソプロロールを投与することが多いと思いますが、意外にも、本論文中にもあるように、HOCMに対するβ遮断薬の効果を厳密に検討したランダム化試験はなく、その効果と作用機序を考えるにあたって重要な論文と考えられます。

発表者:鶴田先生、 文責:矢島

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