【論文解説】HIV感染と心疾患の関連について

Global Burden of Atherosclerotic Cardiovascular Disease in People Living with the Human Immunodeficiency Virus: A
Systematic Review and Meta-Analysis

Circulation . 2018 September 11; 138(11): 1100–1112.

 HIV治療中に発症した急性冠症候群の症例をもとに、HIV感染と心疾患の関連について考察しました。
 1996年以前は、HIV感染者の年間死亡率は20%を超えていたが、高ウィルス薬の導入により、現在の年間死亡率は2%未満にまで減少しています(N Engl J Med 1998; 338:853. Lancet 2006; 368:451.)。
 HIV感染者の死亡のほとんどは、感染に伴うものではなく、治療に起因する心血管疾患によるものとなっています。HIV治療薬の脂質異常症への影響や虚血性心疾患との関連については、本邦で出されている ”抗HIV治療ガイドライン 2022年3月” に詳述されています。
 また、HIV感染は、虚血性心疾患のみならず、肺高血圧症、心筋症、心外膜疾患との関連が指摘されており、循環器内科医として知っておく必要があります(Eur heart J 2013;34:3538-46.)。

 今回読んだ論文は、HIV症例と動脈硬化性疾患との関連や、それが世界でどれだけ問題になっているかを提示した研究についてです。
 過去に行われた80の研究の系統的レビューがなされており、HIVと心血管疾患との関連は障害調整生命年(DALY)で示されました。
 障害調整生命年(DALY)は医療経済や医療の質を扱う際に用いられる指標ですが、「平均寿命に対して、疾患がどれだけ健康な時間が失われたのか。」、「1 DALYは、健康な状態で過ごすはずだった人生を、1 年失ったこと」を意味しています。このDALYを用いることによって、国別でどのような疾患が問題となっているのかを比較したり、同じ日本の中でも年代によって、どのような疾患が増えてきているかを示すことができます。
 論文の中では、主にHIVに感染している人は、感染していない人と比較すると,心血管疾患のリスク比は2.16倍であること、HIV感染者の心血管疾患は1990年から2015年にかけて、全世界で3倍以上に増加していることが示されております。

 この抄読会で、HIV症例は循環器疾患と無縁ではないこと、HIV治療中に急性冠症候群を予防すべく、脂質のコントロールを含め対処が必要であること、またHIV症例への診療での医療者への感染リスクは高いとは言えない(体液暴露で0.3%)が、針刺しなどがあった際には対処が必要であること、を共有しました。

文責 横井

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