ASと多枝冠動脈疾患合併例への最適な治療は?

Lancet.2025 Dec 21;404(10471):2593-2602.
TransCatheter aortic valve implantation and fractional flow reserve-guided percutaneous coronary intervention versus conventional surgical aortic valve replacement and coronary bypass grafting for treatment of patients with aortic valve stenosis and complex or multivessel coronary disease (TCW): an international, multicentre, prospective, open-label, non-inferiority, randomised controlled trial

本研究は、大動脈弁狭窄症(AS)と複雑または多枝冠動脈疾患を合併する患者に対する治療として、経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)+フラクショナルフローリザーブ(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が、従来の外科的大動脈弁置換術(SAVR)+冠動脈バイパス移植術(CABG)と比較して非劣性であるかを検討した国際多施設前向き無作為化非盲検非劣性試験(TCW試験)です。

方法:
本試験はヨーロッパ18施設で実施され、70歳以上の重症ASと複雑冠動脈疾患を有し、カテーテル治療または外科治療が可能と判断された患者を対象としています。患者は1:1の割合でFFRガイド下PCI+TAVI群(91例)またはSAVR+CABG群(81例)に無作為に割り付けられました。主要評価項目は、1年後の全死亡、心筋梗塞、無力化脳卒中、標的血管再血行再建術、弁再介入、および生命を脅かすまたは無力化出血の複合イベントです。

結果:
TAVI+PCI群の主要評価項目発生率は4%(4/91例)であり、SAVR+CABG群の23%(17/77例)に比べ有意に低い結果でした(リスク差 -18.5%、p<0.001)。TAVI+PCIはSAVR+CABGに対し非劣性を達成し(90% CI上限 -9.7%)、さらに優越性も認められました(ハザード比 0.17, 95% CI 0.06–0.51, p<0.001)。この差は主に全死亡率(0% vs 10%, p=0.0025)および生命を脅かす出血(2% vs 12%, p=0.010)の減少によるものでした。
さらに、1年後の主要心血管イベント発生率(3% vs 14%, p=0.014)、全死亡および脳卒中の複合発生率(1% vs 12%, p=0.0027)もTAVI+PCI群で有意に低い結果でした。一方、TAVI+PCI群ではペースメーカー植え込み率がやや高く(10% vs 3%)、SAVR+CABG群では心房細動発生率(4% vs 14%, p=0.020)および再開胸率(0% vs 5%, p=0.028)が高い割合でした。

結論:
本試験は、重症ASと複雑冠動脈疾患を合併する患者において、FFRガイド下PCI+TAVIがSAVR+CABGと比較し、主要評価項目および死亡率の点で優れた成績を示したとしています。

発表 陳先生    文責 吉岡

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次