【論文解説】急性冠症候群の患者において、ベースラインのBaselineのLDLが低い症例に対するスタチンとエゼチミブの併用による集中的な脂質低下療法の有用性について( IMPROVE-ITのサブ解析)

Baseline Low-Density Lipoprotein Cholesterol and Clinical Outcomes of Combining Ezetimibe With Statin Therapy in IMPROVE-IT

Kazuma Oyama, Robert P Giugliano, Michael A Blazing, Jeong-Gun Park, Andrew M Tershakovec, Marc S Sabatine, Christopher P Cannon, Eugene Braunwald

J Am Coll Cardiol. 2021 Oct 12;78(15):1499-1507.

 

IMPROVE-IT(Improved Reduction of Outcomes: Vytorin Efficacy International Trial)試験では、急性冠症候群発症後、安定した患者において、シンバスタチン40mgにエゼチミブ10mgを追加することにより、LDL-C<70mg/dLを維持することにより、長期的な心血管イベントの再発を有意に抑制できることが示された。

しかし、もともとのLDL-Cが70㎎/dLよりも低値の患者においても、標準治療であるスタチンにエゼチミブを追加することの有益性については明らかではない。

この論文はIMPROVE-IT試験のサブ解析でこれらを検討している。

IMPROVE-ITに登録された、急性冠症候群後の17,999人の患者を、ベースラインのLDL-C値により、50-70, 70-100, 100-125 mg/dLの3群に層別化し、それぞれの群において、エゼチミブかプラセボのどちらかが投与された。これらの患者を6年間追跡し、心血管系疾患による死亡や、主要冠動脈イベント、脳卒中の複合エンドポイントを主要評価項目とした。

結果、観察開始4か月以降のLDL-C値は、3群それぞれにおいて、エゼチミブ追加群とプラセボ追加群のLDL-Cの絶対値の差は同程度であった。ベースラインのLDL-C値のすべての群において、エゼチミブ追加による主要エンドポイントのリスク低減率は同程度であった。またエゼチミブ追加による副作用の出現率はプラセボ群と同様であった。

この結果、急性冠症候群後、ベースラインLDL-C値が50-125mg/dLの範囲にある患者において、標準治療であるスタチンにエゼチミブの追加は、ベースラインのLDL-C値に関わらず、有効と考えられる。

この論文を読み、以下のような議論が交わされました。

  • 本邦ではストロングスタチンが一般的に使用されているが、本研究ではシンバスタチンが使用されている。
  • 急性冠症候群を発症した際の採血は一般的にLDL-Cが平常時よりも低値となるため、ベースラインのLDL-Cを患者本来のLDL-C値として扱ってよいかどうか。
  • 個々の患者において、LDL-C値の絶対値よりも、治療前後のLDL-C値の減少率がより重要である可能性。
  • よりLDL-C値を低下させる治療であるPCSK9阻害薬の有用性を検討したFOURIER試験, ODYSSEY試験は、急性冠症候群や脳卒中は減らしているが、心血管死を減らしておらず、本研究でも同様の結果となっている。
  • 本研究では急性冠症候群の症例につき取り扱われているが、近年、急性冠症候群は安定冠動脈疾患(慢性冠症候群)と連続した病態と考えられているため、急性冠症候群、慢性冠症候群と分けずにLDLはより低い値で管理されるべきではないか。

発表者 峰松先生、文責 横井

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