【論文解説】中隔縮小手術の適応となる閉塞性肥大型心筋症患者へのマバカムテンの効果

Myosin Inhibition in Patients With Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy Referred for Septal Reduction Therapy

Milind Y. Desai, MD, MBA, Anjali Owens, MD, Jeffrey B. Geske, MD, Kathy Wolski, MPH, Srihari S. Naidu, MD, Nicholas G. Smedira, MD, MBA, Paul C. Cremer, MD, MS, Hartzell Schaff, MD, Ellen McErlean, RN, MSN, Christina Sewell, RN, Wanying Li, PHD, Lulu Sterling, PHD, Kathy Lampl, MD, Jay M. Edelberg, MD, PHD, Amy J. Sehnert, MD, Steven E. Nissen, MD

JACC, 2022 Jul.12;(80):95-108

閉塞性肥大型心筋症患者におけるミオシン阻害薬mavacamtenの効果について、矢島が紹介しました。

閉塞性肥大型心筋症においては、本邦のガイドラインで最大耐用量の薬剤治療を行ってもなおNYHAⅢ〜Ⅳの心不全症状を有し、安静時あるいは誘発時の左室流出路圧格差が50mmHg以上ある場合に、症状改善を目的とした中隔縮小治療(SRT)が検討されます。しかしながら、心筋切除術や経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA : Percutaneous transluminal septal myocardial ablation) といった中隔縮小治療は侵襲的で、合併症やリスクを伴う治療でもあります。

本論文では、左室流出路圧較差が50mmHg以上、EF 60%以上、左室中隔壁厚15mm以上(肥大型心筋症の家族歴がれば13mm以上)で、最大耐用量の薬物治療でも息切れ・胸痛等の症状があるNYHA Ⅲ°/Ⅳ°もしくはNYHAⅡ°でも失神や前失神の症状がある患者において、mavacamtenとプラセボの二重盲検試験を行っています。患者は4週ごとに心エコーを受け、16週まで経過を見られました。

結果、mavacamten群では39.1±36.5mmHgの圧較差低減を認め、62.5%にNYHA classの1度以上の改善を認めました。また、16週後には82%がSRT適応を外れる状況まで改善していました。mavacamten群で2例にEF 50%未満への低下を認めたため、一時的な休薬を行ったものの再開に至り、今後長期経過の試験へ組み込まれています。4週間ごとの心エコーで観察し、使用量を検討することが安全性を高めることにつながったとしています。

短期間の観察であることがlimitationであり、今後長期的な効果・安全性が望まれています。

フロアからの質問・コメントとして、

本邦での使用時期がどうなりそうか、薬価等はどうか、といったものが出ました。

発表者/文責 矢島

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