【論文解説】運動誘発性の二次性僧帽弁逆流に対する経カテーテル的僧帽弁修復の有効性について

Prognostic impact of transcatheter mitral valve repair in patients with exercise-induced secondary mitral regurgitation

Masaki Izumo, Shingo Kuwata, Yuki Ishibashi, Tomomi Suzuki, Hiroshi Ohara, Mika Watanabe, Yukio Sato, Haruka Nishikawa, Kazuaki Okuyama, Ryo Kamijima, Manabu Takai, Seisyo Kou, Tomoo Harada, and Yoshihiro J. Akashi

European Heart Journal-Cardiovascular Imaging (2021)22,530-538

循環器疾患患者においては、安静時の検査で異常が見つからない場合も、運動負荷時にどうかを検討する必要がある。

心エコーでの運動負荷に分類されるものとして、ハンドグリップやエルゴメータを用いたものがある。ハンドグリップ負荷は後負荷を上昇させ血圧を上げるが、stroke volume(SV)をあまり増加させない。エルゴメータ負荷は、末梢血管抵抗は変わらないかやや下がり、前負荷が増え、SVが増加する。二次性(機能性)僧帽弁逆流については、可能ならエルゴメータ負荷での評価を推奨するという報告も見られる。エルゴメータ負荷では、3分ごとに負荷量を上げていくことが多いが、負荷程度は、施設や患者背景によって使い分けられていることが多い。

Mitraclipでの経カテーテル的僧帽弁治療の適応は、僧帽弁逆流(MR)の重症度判定は運動・安静問わないとなっており、本研究では、運動負荷で重症となるMRについて検討している。

方法として、200例の中等度機能性MR患者のうち、エルゴメータでの運動負荷によりEROAが0.13cm2以上増加する患者46例を後ろ向きに検討した。46例のうち、19例がMitraclipを受け、27例が内服治療継続のコントロール群であった。後ろ向きであるため、Mitraclip群とコントロール群の背景には差があり、これが本研究のlimitationとなっている。ベースラインでは、Mitraclip群で有意に年齢、NYHA2以上の割合が高く、安静時心エコーではEFがより低いが、心拍出量に差はなし、負荷時心エコーでも安静時同様であった。13ヶ月の経過において、全死亡1例、心不全発症が10例で見られており、運動誘発性MRの予後があまり良くないことがわかった。Mitraclip群はコントロール群と比較して予後がよく、NYHAの約1年の比較では、NYHA2度・3度が少ない傾向であったが、有意差はなかった。生存に寄与する因子を多変量Cox解析すると、運動時のLVEFとMitraclipに関係が見られた。

単施設研究で症例数が少ないこと、後ろ向きで投薬が標準化されていないこと、選択バイアスを低減する傾向スコアマッチングなどが行えていないこと、Mitraclip後の運動負荷心エコーを行えていないことなどのlimitationがあった。

今後、当院においても、MRが中等度以下であっても、労作時の症状がある方や、心エコーで明らかに僧帽弁の接合が浅いなどの気になる所見がある方などで、積極的にエルゴメータ負荷をかけた検査を検討していきたい。

発表:鍋嶋先生、文責:矢島

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