【論文解説】急性心不全の予後を改善する取り組み 〜COACH trial〜

Trial of an Intervention to Improve Acute Heart Failure Outcomes

D.S. Lee, S.E. Straus, M.E. Farkouh, P.C. Austin, M. Taljaard, A. Chong, C. Fahim, S. Poon, P. Cram, S. Smith, R.S. McKelvie, L. Porepa, M. Hartleib, P. Mitoff, R.M. Iwanochko, A. MacDougall, S. Shadowitz, H. Abrams, E. Elbarasi, J. Fang, J.A. Udell, M.J. Schull, S. Mak, and H.J. Ross, for the COACH Trial Investigators

NEJM, 2022 Nov. 388;21:22-32

急性心不全患者は、さらなるイベント発祥のリスクがあるため入院治療を選択する頻度が高い。急性心不全の患者を入院させるか退院させるか、臨床医の判断をサポートするようなツールを用い、早めの外来通院を行うことで予後を改善させることができるか検討した試験です。

カナダの10の病院で、横断的なstepped-wedgeクラスター無作為化試験として、2972例のコントロールフェーズ、2480例の介入フェーズが解析されました。

まず、介入フェーズでは救急外来部門に来院した急性心不全患者は、1つ目の介入として、EHMRG-30STというスコアを用いて、high、low、intermediate -low、intermediate-highの4つのリスクに層別化され、highリスク群では入院治療、lowリスク群では帰宅もしくは早期の退院、intermediate-low/highリスクではそれぞれ臨床医の判断によって、その後の治療方針が決められます。このスコアはweb上にカリキュレータがありそこに入力することでスコアリングできます。その後、帰宅や早期退院した患者は、RAPID-HFクリニックという心不全急性期の治療に特化した外来で30日間の診療を行い、それぞれに応じてかかりつけや専門医での慢性期の治療が継続されていく流れになります。RAPID-HFクリニックは、看護師とスーパーバイズする循環器科医で構成されており、クリニックでの検査や治療の方向性はある程度ガイドラインで決められており、それに沿って診療を行います。コントロールフェーズでは、これらの介入は全て臨床医の判断に一任されており、RAPID-HFクリニックを使用することはありません。

これらの結果、リスクを層別化しRAPID-HFクリニックでの治療介入を行なった方針決定をサポートするアルゴリズムを用いて、数回の頻繁なフォローを行う介入フェーズでは、コントロールフェーズと比べて30日以内の全死亡および心血管系入院のリスクが下げることができました。

フロアからの質問・コメントとして、患者の理解度や認知機能などに触れているのか、サブ解析でEFの違いでの有意差があったか、このリスクスコアリングシステムはよく用いられるものなのか、などが出ました。

発表・文責:矢島

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