【論文解説】前毛細血管性(pre-capillary)・複合型(combined)・後毛細血管性(post-capillary)肺高血圧症について −病態生理学的な繋がり−

Pre-Capillary, Combined, and Post-Capillary Pulmonary Hypertension A Pathophysiological Continuum

Christian F. Opitz, MD, Marius M. Hoeper, MD, J. Simon R. Gibbs, MD, Harald Kaemmerer, MD, VMD, Joanna Pepke-Zaba, MD, J. Gerry Coghlan, MD, Laura Scelsi, MD, Michele D’Alto, MD, Karen M. Olsson, MD, Silvia Ulrich, MD, Werner Scholtz, MD, Uwe Schulz, MD, Ekkehard Grünig, MD, Carmine D. Vizza, MD, Gerd Staehler, MD, Leonhard Bruch, MD, Doerte Huscher, MSC, PHD,  David Pittrow, MD, Stephan Rosenkranz, MD

JACC. Vol.68, No. 4, 2016. 368-378

「HFpEFの肺高血圧症(PH)」と「特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)」の患者間の類似性や違いを特徴づけるために、レジストリデータを用いて3群間を比較検討した試験です。

典型的IPAH(左心疾患危険因子が3つ未満)421例、非典型的IPAH(左心疾患危険因子が3つ以上)139例、肺高血圧症治療を受けているPH-HFpEF226例の3群において、血行動態、治療反応性を解析しています。

典型的IPAHに比べて、非典型的IPAHやPH-HFpEFの患者は年齢が高く、BMIが大きく、合併症が多く、6分間歩行距離が短くなりました。PH治療の導入12ヶ月後には、3群全てで運動耐用能やWHO機能分類、BNPが改善しましたが、PH-HFpEF群では他に比べてあまりよくない状況でした。薬剤については、PH-HFpEF群でPDE5阻害薬が96%で導入されているものの、診断後3ヶ月以内に多くの患者で中止、ERAも元々の導入が1割を満たしませんが、うち半数が中止されていました。5年間の全死亡は3群間で有意な差は見られませんでした。非典型的IPAHのリスク背景と患者背景はPH-HFpEF群と似ている点が多く、典型的IPAHと非典型的IPAHでは血行動態の類似が多くありました。薬剤への治療反応性は3群間で大きく異なるものでした。

本研究はレジストリデータのため質が担保されない、併存疾患としての左心疾患は明らかなもののみである肺高血圧症治療薬と抗凝固薬以外の薬剤データがない、心エコー・右心カテのフォローが不足しているなどのlimitationがあります。

非典型的IPAH、PH-HFpEFは現在も治療に苦慮する病態であり、この論文はガイドラインや肺高血圧症治療に対する考え方をサポートする点で重要な論文です。

発表:兼田先生、文責:矢島

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