【論文解説】低もしくは中等度の外科的リスクのASに対するSAVRもしくはTAVRの長期予後:一般集団との比較

Long-term survival after surgical or transcatheter aortic valve replacement for low or intermediate surgical risk aortic stenosis: Comparison with general population

Shusaku Maeda, Koichi Toda, Kazuo Shimamura, Daisuke Yoshioka, Koichi Maeda, Yu Yamada, Masataka Igeta, Yasushi Sakata, Yoshiki Sawa, Shigeru Miyagawa

Journal of Cardiology 81 (2023)

重症大動脈弁狭窄症(severe AS)に対する外科的手術(SAVR)と経カテーテル的手術(TAVR)の予後の一般人口との比較についての論文を陳先生が紹介しました。

大阪大学の単施設、後ろ向き研究です。severe ASに対してSAVRもしくはTAVRを行った症例を評価しています。STSスコアが8点以上の高リスク患者は除外しています。プライマリーエンドポイントは全死亡と心血管関連死で、他に、構造的な弁劣化(ベースラインからmean PG10mmHg以上増加、PVLなど)としています。

患者背景として、SAVRについては、低リスク群は71.6歳、中等度リスク群は76.6歳、冠動脈3枝病変と左冠動脈主患部病変、慢性腎臓病、糖尿病、維持透析などの合併は中等度リスク群で多くなりました。生体弁の使用が451人と全体の86%、CABGを行った患者は148人でした。TAVRについては、低リスク群で77.6歳、中等度リスク群で83.1歳、慢性腎臓病や肝疾患の合併が中等度リスク群で多くなりました。使用した弁については、低リスク群においてはself -expandableとbaloon-expandableが半々であったのに対し、中等度リスク群ではbaloon-expandableが多くなりました。大腿動脈アプローチが9割で、心尖部アプローチはTAVR導入初期に多く行われていました。CABGを必要とした症例は9例でした。

長期予後については、SAVRにおいて、低リスク群で5年生存率は90%と年齢・性別を合わせた一般人口群と同等の予後でした。中等度リスク群では77% と一般人口より低い値となりました。TAVRにおいては、低リスク群で64%、中等度リスク群で68%と心血管死に両群の差はありませんでした。

弁の耐久性については、SAVRにおいて弁口面積は7年後も術後と比較し99%、TAVRにおいては、5年後で91%と保たれていました。弁不全やpara-valvular leakはSAVRでもTAVEでもほとんど出現がありませんでした。

日本人の平均余命は、男性70歳で16年、75歳で13年、女性は70歳で20年75歳で16年と長いため、海外と違い70歳から75歳の手術リスクが低いAS患者の場合、SAVRがよいかもしれません。中等度リスク群においては、虚血性心疾患や慢性腎臓病、末梢血管疾患、糖尿病、維持透析など心血管疾患の合併が多く、そのためフォロー中の心血管関連死亡が多く見られています。一般人口群よりも統計学的に予後は悪い結果となりましたが、西側諸国での報告よりも術後生存率は良い状況でした。TAVR患者は一般人口よりも生存率は低くなりましたが、SAVR患者と比較すると心血管関連死亡の割合が少なく、感染症やがんなどの非心血管死が多く見られました。

SAVRとTAVRでは、患者背景が違うので直接比較は困難でした。

世界の中でも平均余命が長い日本においては、弁劣化の心配が少ないSAVRが比較的行いやすいのではないかと考えられています。

発表:陳先生、文責:矢島

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