~あわてず、まずは正しく理解しましょう~
健康診断で心電図(ECG)を受けた後、「脚ブロックがありますね」と言われて戸惑った方は多いのではないでしょうか。
「脚」って何?心電図の異常って重大なの?と思われるかもしれません。今回は、そんな「脚ブロック」について、わかりやすくご説明します。
① 脚ブロックとは何か?心電図異常の意味
心臓は、「電気信号」で動いています。心臓の中に電気の通り道があり、その信号がスムーズに伝わることで、心臓は一定のリズムで拍動します。
この電気の通り道のうち、心室(心臓の下の部屋)に信号を伝える線を「脚(あし)」と呼びます。右側にあるのが「右脚(うきゃく)」、左側にあるのが「左脚(さきゃく)」です。
脚ブロックとは、これらの「右脚」や「左脚」に、電気の通りが遅れたり、一部遮断されたりする状態のことをいいます。つまり、電気信号が心室にスムーズに伝わらず、心電図にその“ズレ”が波形として表れるのです。
種類としては主に以下の3つがあります。
- 右脚ブロック(RBBB)
- 左脚ブロック(LBBB)
- 左脚の部分的ブロック(左脚前枝ブロックや左脚後枝ブロック)
心電図上の波形を見ることで、どのタイプかを判断します。
② どんな人が注意が必要か?
「脚ブロック」と診断されても、すぐに病気というわけではありません。中にはまったく問題のないケースもあります。
③右脚ブロック(RBBB)の場合
健康な方でも、年齢や体型によって一時的に右脚ブロックが見られることがあります。特に症状もなく、ほかに異常がなければ、経過観察だけでよいことが多いです。
ただし、以下のような場合には注意が必要です:
- 過去に失神したことがある
- 息切れや動悸などの症状がある
- 心筋症や先天性心疾患などの病歴がある
- 心不全や肺の病気がある
④左脚ブロック(LBBB)の場合
左脚ブロックは、より注意が必要です。というのも、左心室は全身に血液を送り出す重要な部屋で、そこに電気がうまく伝わらないと、心臓の動きそのものに影響が出やすいからです。
以下のような方では、左脚ブロックが“心臓病のサイン”であることがあります:
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病を持っている
- 心不全や心筋梗塞の既往がある
- 息切れや胸痛などの症状がある
- 高齢の方でふらつきや失神がある
こういった背景がある場合、左脚ブロックは「心臓に何らかの問題が起きている」サインの可能性があるため、精密検査が勧められます。
⑤ 病院で行われる検査とは?
脚ブロックを指摘された場合、必要に応じて循環器専門の医療機関で検査を行います。主な検査は以下のとおりです。
- 12誘導心電図の再確認
まずは再度、正確に心電図を取り直して、波形の確認を行います。電極の位置ズレなどが原因で、誤って脚ブロックに見えることもあります。 - ホルター心電図(24時間心電図)
1日を通じた心拍の変化を記録し、電気の伝わり方や不整脈の有無を評価します。 - 心臓超音波検査(心エコー)
心臓の形や動き、心臓の壁の厚さやポンプ機能を確認します。脚ブロックが心不全や心筋症などの病気によるものかどうかを評価できます。 - 血液検査(BNP、心筋逸脱酵素など)
心臓に負担がかかっていないかを調べます。 - 心筋シンチグラフィーや心臓MRI(必要に応じて)
より詳細な心筋の状態や血流、線維化の有無を確認する検査です。 - 運動負荷試験や電気生理学的検査(EPS)
必要に応じて行われますが、これは高リスクが疑われる場合に限られます。
脚ブロックが見つかったからといって、すぐに治療が必要なわけではありませんが、背景に心臓の病気がある場合には、早めに原因を特定することが重要です。
おわりに:慌てず、正しく知りましょう
健康診断で「脚ブロック」と言われると、心臓の病気では?と不安になるかもしれません。ですが、多くの場合は無症状で経過観察可能なものです。
ただし、症状がある方、基礎疾患がある方、左脚ブロックと診断された方などは、心臓の精密検査を受けることで安心につながります。
大切なのは、「心電図の一つのサイン」として脚ブロックを受け止め、必要な検査を受けて今のご自身の状態を把握することです。
少しでも不安があれば、かかりつけ医や循環器内科専門医に相談してみましょう。
あなたの健康を守る第一歩は、「知ること」から始まります。