Suzuki T, Kohsaka S, Spertus JA, Shoji S, Shiraishi Y, Ikemura N, Nakamaru R, Ohata T, Kodaira M, Ueda I, Noma S, Numasawa Y, Ieda M. Risk-Stratified Prognostic Implications of Contrast-Associated Acute Kidney Injury After Percutaneous Coronary Intervention. JACC Adv. 2025 Jul;4(7):101899. doi: 10.1016/j.jacadv.2025.101899. PMID: 40713149; PMCID: PMC12418422.
本研究は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に発生する造影剤関連急性腎障害(contrast-associated acute kidney injury:CA-AKI)の長期予後への影響を、患者の腎障害リスク層別化を考慮して検討したものです。対象は2008~2021年に日本の多施設PCIレジストリ(JCD-KiCS)に登録された7,916例で、NCDR(National Cardiovascular Data Registry)のAKIリスクスコアに基づき、低・中・高リスクの三群に分類されました。CA-AKIはクレアチニン値0.3 mg/dL以上または50%以上の上昇、あるいは透析導入で定義されています。
結果としてCA-AKIは723例(9.1%)に発生し、リスク群別の発生率は低リスク群2.3%、中リスク群7.3%、高リスク群17.9%でした。CA-AKI発症例では、2年間の主要心血管イベント(MACE:全死亡、急性冠症候群、心不全入院、脳卒中)の発生率が有意に高く(22.7% vs 10.6%、p<0.001)、特に全死亡(11.2% vs 4.1%)と心不全入院(12.5% vs 4.3%)の増加が顕著でした。多変量Cox解析では、CA-AKIはMACEの独立したリスク因子であり、全体で補正ハザード比(aHR)1.64(95%CI 1.37–1.97)でした。リスク層別化後も一貫して有意な関連が認められ(高リスク群1.60、中リスク群1.64、低リスク群2.84)、CA-AKI発症とMACEとの関連におけるリスク群間の交互作用は有意でありませんでした(P=0.14)。
考察として、CA-AKIは軽度のクレアチニン上昇であっても長期的な心血管リスク増大と関連し、心不全入院や死亡の主因となることが示されました。この影響は高リスク群だけでなく低リスク群でも同様に認められ、CA-AKI予防の重要性が全患者層に及ぶことが明らかとなりました。機序としては、酸化ストレスやRAA系活性化、体液貯留、尿毒症性変化などによる心筋障害の関与が推定されています。また、CA-AKIが単なるリスクマーカーではなく、独立した転帰悪化因子である可能性が支持されました。
本研究の結果は、PCI施行時の造影剤使用量最適化や周術期補液など、CA-AKI予防戦略を全患者に適用する必要性を強調しています。今後は、リスクスコアを臨床現場に組み込み、個々のリスクに応じた安全な造影剤使用指針を普及させることが求められます。
発表:福田先生 文責:吉岡
