<健康診断結果解説④>健康診断で「Brugada型心電図」と言われたあなたへ

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~知っておきたいその意味と、次にすべきこと~

 「健康診断の心電図で、ブルガダ型波形がありますね」と健診医から聞いて、不安になった方もいらっしゃるかもしれません。

 “ブルガダ型”という聞き慣れない名前の心電図異常。これが一体どういう意味を持ち、どんな人が注意すべきで、病院ではどんな検査が行われるのか――本記事では、循環器内科医としてその疑問に丁寧にお答えします。

 

① 心電図異常が意味するところ

 ブルガダ(Brugada)型心電図とは、心電図のV1~V3という胸の上に貼る電極で、特有の波形が見られる状態のことを指します。

 この波形は、右心室の一部の電気の流れに異常があるサインであり、心室細動という致死性の不整脈を引き起こす可能性がある「Brugada症候群(ブルガダ症候群)」という病気と関係することがあります。

 ただし注意が必要なのは、「Brugada型波形がある = Brugada症候群である」とは限らない、ということです。

 Brugada症候群は“診断基準”があり、その一部に「典型的な心電図波形」が含まれているだけで、すべての人が病気というわけではありません。健常者でも、たまたま熱や薬の影響でBrugada型波形が一時的に出ることもあります。

② どのような方が問題となるのか

 心電図でBrugada型波形を指摘されたからといって、すぐに大きな病気が見つかるとは限りません。実際、健診で見つかるBrugada型の多くは「偶然見つかったもの」であり、経過観察で済むことが多いです。

 ただし、以下のような方は特に注意が必要です:

・突然死の家族歴がある(特に40歳未満)
・過去に失神したことがある(特に入浴中・睡眠中・発熱時)
・動悸、胸の違和感がある
・てんかんのようなけいれんを起こしたことがある(実は不整脈の場合も)
・心電図で「Type 1型Brugada波形」が見つかったと言われた

 このような場合は、Brugada症候群のリスクがある可能性があるため、循環器専門医による精密検査がすすめられます。

また、男性・40代以降・東アジア系(日本を含む)では、この病気が発症しやすい傾向があるとされており、体質や遺伝も一定の関与があります。

③ 病院で行われる検査とは

 循環器内科では、Brugada型波形が見られた方に対して、以下のような検査や評価が行われます。

● 12誘導心電図(再検)
通常の心電図より電極の位置を少し上にずらして記録することで、典型的な波形(Type 1)かどうかを詳しく判定します。

● ホルター心電図(24時間心電図)
 1日中の心電図を記録し、夜間や入浴時などに一時的に異常波形が現れるかどうかを確認します。

● 薬剤負荷試験(プロカインアミドまたはピルジカイニドなど)
特定の薬を使って心臓の電気の流れをあえて変化させ、隠れていたBrugada波形(Type 1)が現れるかどうかを調べる検査です。短時間の点滴を行い、心電図を観察します。

● 心エコー(超音波検査)
構造的な心疾患(心筋症など)がないかを確認します。Brugada症候群は、基本的には「構造的異常がない心臓」で起こる不整脈です。

● 遺伝子検査(必要に応じて)
 家族に同じ波形や突然死がある場合は、SCN5Aなどの遺伝子異常を調べることがあります。ただし、すべての患者で異常が見つかるわけではありません。

● EPS(電気生理学的検査)や植込み型除細動器(ICD)の適応検討
 リスクが高いと判断された場合、心臓内に電極を入れて不整脈を起こしやすいか調べたり、必要であれば命を守る装置(ICD)の埋め込みが検討されます。 

おわりに:慌てず、正しく知って行動を

 Brugada型心電図波形は「放っておくと突然死につながる可能性がある」一方で、「心電図で見つかったけれど病気ではない」という場合も多く、判断が難しい領域です。

 大切なのは、「怖い病気だ!」と過剰に恐れすぎないことです。

 健診で指摘されたら、まずは循環器内科を受診して、正確な評価を受けましょう。何かリスクが見つかれば、きちんと備えることができますし、問題がなければ安心して生活できます。

 あなたの未来の安心のために、一歩踏み出してみてください。

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