<健康診断結果解説⑥>健康診断で「期外収縮」と言われたあなたへ 〜心臓の合図を正しく知ろう〜

 毎年の健康診断、何気なく受けていたのに、今年は「心電図異常:期外収縮」との記載。
「えっ、期外収縮ってなに?」「これって放っておいていいの?」と、不安に感じた方も多いのではないでしょうか。

 今回は、循環器内科医の視点から、「期外収縮」という心電図異常について、分かりやすくお伝えします。この記事を読めば、自分の体とどう向き合えばいいか、きっと見えてくるはずです。

目次

① 心電図異常が意味するところ:期外収縮とは?


 「期外収縮(きがいしゅくしゅく)」とは、本来の心拍のタイミングとはズレて、心臓が“余分に早く打ってしまう”現象のことです。
 心臓は電気信号によってリズムよく拍動していますが、この信号が通常とは異なる場所から出てしまうと、予定外の収縮が起こることがあります。

 期外収縮には主に2種類あります。

  • 上室性期外収縮:心房という上の部屋から早く電気が出るタイプ。
  • 心室性期外収縮:心室という下の部屋から早く電気が出るタイプ。

 どちらも、一時的には「ドキッ」とするような感じ、あるいは「胸が抜ける感じ」などとして自覚することがありますが、全く症状がない方も珍しくありません。

② どのような方が問題となるのか?


 ここがとても大事なポイントです。

 実は、期外収縮は健康な方でも起こることがあります。特に、睡眠不足、ストレス、カフェインの摂りすぎ、脱水、喫煙などが関係することもあります。つまり、心臓が問題ではなく、“生活習慣のサイン”として現れている場合もあるのです。

 ただし、以下のような場合には、より詳しい評価が必要になることがあります:

  • 頻繁に期外収縮が出ている(1日に1万回を超える)
  • 運動中や運動後に出る
  • 胸痛や息切れ、失神などの症状を伴う
  • 心疾患(心筋梗塞、心筋症など)の既往がある
  • 家族に突然死の方がいる

 こうしたケースでは、期外収縮が“単なる電気のエラー”ではなく、心臓の病気のサインである可能性があるため、しっかりと評価することが重要です。

③ 病院で行われる検査とは?


 「心電図に異常があったので病院を紹介されました」と来院される方には、以下のような検査を行うことが多いです。

■ 安静時心電図

 これは健康診断で行われるものと同じです。波形の特徴や種類を詳しく読み取ります。

■ ホルター心電図(24時間心電図)

 1日中の心電図を記録することで、どのタイミングで期外収縮が出ているのか、頻度や傾向を分析します。睡眠中や日常生活での変化を知るのに非常に有用です。

■ 心エコー(心臓超音波)

心臓の形や動き、弁の状態を観察します。期外収縮が心臓の構造異常に関連していないかをチェックします。

■ 運動負荷試験(エルゴメーターなど)

 運動によって期外収縮が増えるか、逆に減るかを見る検査です。運動時に危険な不整脈が出るかどうかも確認します。

■ 血液検査

 甲状腺ホルモンの異常や電解質異常など、心臓に影響する体内のバランスをチェックします。


最後に:不安より、理解と行動を。

 健康診断での「期外収縮」という言葉は、最初こそ不安を与えるかもしれませんが、多くの場合は良性で、命に関わるものではありません。

 しかし、“その人にとって安全かどうか”を見極めるには、やはり医師による評価が必要です。

 自分の心臓のリズムに耳を傾けることは、健康への第一歩。ぜひ、気になる症状があれば、循環器内科を受診してみてください。


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