毎年の健康診断、何気なく受けていたのに、今年は「心電図異常:期外収縮」との記載。
「えっ、期外収縮ってなに?」「これって放っておいていいの?」と、不安に感じた方も多いのではないでしょうか。
今回は、循環器内科医の視点から、「期外収縮」という心電図異常について、分かりやすくお伝えします。この記事を読めば、自分の体とどう向き合えばいいか、きっと見えてくるはずです。
① 心電図異常が意味するところ:期外収縮とは?
「期外収縮(きがいしゅくしゅく)」とは、本来の心拍のタイミングとはズレて、心臓が“余分に早く打ってしまう”現象のことです。
心臓は電気信号によってリズムよく拍動していますが、この信号が通常とは異なる場所から出てしまうと、予定外の収縮が起こることがあります。
期外収縮には主に2種類あります。
- 上室性期外収縮:心房という上の部屋から早く電気が出るタイプ。
- 心室性期外収縮:心室という下の部屋から早く電気が出るタイプ。
どちらも、一時的には「ドキッ」とするような感じ、あるいは「胸が抜ける感じ」などとして自覚することがありますが、全く症状がない方も珍しくありません。
② どのような方が問題となるのか?
ここがとても大事なポイントです。
実は、期外収縮は健康な方でも起こることがあります。特に、睡眠不足、ストレス、カフェインの摂りすぎ、脱水、喫煙などが関係することもあります。つまり、心臓が問題ではなく、“生活習慣のサイン”として現れている場合もあるのです。
ただし、以下のような場合には、より詳しい評価が必要になることがあります:
- 頻繁に期外収縮が出ている(1日に1万回を超える)
- 運動中や運動後に出る
- 胸痛や息切れ、失神などの症状を伴う
- 心疾患(心筋梗塞、心筋症など)の既往がある
- 家族に突然死の方がいる
こうしたケースでは、期外収縮が“単なる電気のエラー”ではなく、心臓の病気のサインである可能性があるため、しっかりと評価することが重要です。
③ 病院で行われる検査とは?
「心電図に異常があったので病院を紹介されました」と来院される方には、以下のような検査を行うことが多いです。
■ 安静時心電図
これは健康診断で行われるものと同じです。波形の特徴や種類を詳しく読み取ります。
■ ホルター心電図(24時間心電図)
1日中の心電図を記録することで、どのタイミングで期外収縮が出ているのか、頻度や傾向を分析します。睡眠中や日常生活での変化を知るのに非常に有用です。
■ 心エコー(心臓超音波)
心臓の形や動き、弁の状態を観察します。期外収縮が心臓の構造異常に関連していないかをチェックします。
■ 運動負荷試験(エルゴメーターなど)
運動によって期外収縮が増えるか、逆に減るかを見る検査です。運動時に危険な不整脈が出るかどうかも確認します。
■ 血液検査
甲状腺ホルモンの異常や電解質異常など、心臓に影響する体内のバランスをチェックします。
最後に:不安より、理解と行動を。
健康診断での「期外収縮」という言葉は、最初こそ不安を与えるかもしれませんが、多くの場合は良性で、命に関わるものではありません。
しかし、“その人にとって安全かどうか”を見極めるには、やはり医師による評価が必要です。
自分の心臓のリズムに耳を傾けることは、健康への第一歩。ぜひ、気になる症状があれば、循環器内科を受診してみてください。