Finerenone in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction
DOI: 10.1056/NEJMoa2407107
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2407107#:~:text=Conclusions,from%20cardiovascular%20causes%20than%20placebo.
本研究は、HFmrEF (LVEF 40-50%) やHFpEF (>50%)患者に対する非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンの有効性と安全性を評価したランダム化比較試験です。従来のステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、左室駆出率が低下した心不全患者(HFrEF)においては有効性が示されていますが、HFmrEFやHFpEFに対する効果は十分に確認されていませんでした。
この試験では、心不全とLVEF 40%以上の患者6001人を無作為にフィネレノン群またはプラセボ群に1対1の比率で割り当てました。フィネレノンの投与量は1日20mgまたは40mgで、すべての患者は通常の治療と併用しました。主要な評価項目は、心不全の悪化(未計画の入院や緊急受診)および心血管疾患による死亡の合計でした。
32か月間の追跡調査の結果、フィネレノン群では624人の患者で1083件の主要評価項目が発生し、プラセボ群では719人の患者で1283件の主要評価項目が発生しました。フィネレノン群ではプラセボ群に比べて、心不全の悪化および心血管死のリスクが16%低減しました(95%信頼区間0.74〜0.95、P=0.007)。また、心不全の悪化による入院もフィネレノン群の方が少なく、プラセボ群より18%低減しました(95%信頼区間0.71〜0.94、P=0.006)。心血管死による死亡率はフィネレノン群が8.1%、プラセボ群が8.7%でしたが、有意差はありませんでした。副次的な評価項目として、心不全症状の自己評価スコア(KCCQ)の改善がフィネレノン群で見られましたが、NYHA心機能分類の改善や腎機能に関するアウトカムでは有意な効果は確認されませんでした。
安全性の面では、フィネレノン群では高カリウム血症のリスクが増加しました。具体的には、血清カリウム値が6.0 mmol/Lを超える高カリウム血症がフィネレノン群では3.0%の患者に発生し、プラセボ群では1.4%でした。ただし、高カリウム血症による死亡例は報告されていません。その他の重篤な有害事象の発生率は、両群で大きな差はありませんでした。
結論として、フィネレノンは、HFmrEF ・HFpEFにおいて、心不全の悪化や心血管死のリスクを有意に低減しました。ただし、高カリウム血症のリスクがあるため、治療中は慎重な電解質モニタリングが必要です。この研究は、フィネレノンがHFpEF患者における新たな治療オプションとなる可能性を示唆しており、さらなる臨床応用が期待されます
発表後の討議として、以下のポイントで議論が行われました。
・アジア人に効果はあるのか?
・その作用機序は?
・血圧が低下しなことのメリット
・腎機能の悪化がないことで広がる使用機会
・HFpEF診療での今後の役割
発表 嘉村先生 文責 吉岡