【論文解説】高齢NSTEMIへの侵襲的治療の選択:SENIOR-RITA trialより

N Engl J Med . 2024 Nov 7;391(18):1673-1684.
Invasive Treatment Strategy for Older Patients with Myocardial Infarction

この論文は、高齢者(75歳以上)の非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に対する侵襲的治療戦略と保存的治療戦略の有効性を比較する多施設共同の無作為化試験(SENIOR-RITA試験)の結果を報告しています。
本研究では、英国の48施設において1518名の患者が登録され、侵襲的治療群(冠動脈造影と血行再建+最適な薬物療法)と保存的治療群(最適な薬物療法のみ)に1:1の比率で無作為に割り付けられました。主要評価項目は、心血管死または非致死性心筋梗塞の複合エンドポイントです。

患者の平均年齢は82歳で、45%が女性、32%がfrailと評価されました。中央値4.1年の追跡期間中に、主要評価項目の発生率は侵襲的治療群で25.6%、保存的治療群で26.3%であり、統計的に有意な差は認められませんでした(ハザード比0.94、95%信頼区間0.77-1.14、P=0.53)。心血管死はそれぞれ15.8%、14.2%であり(HR 1.11、95%CI 0.86-1.44)、非致死性心筋梗塞の発生率は11.7%(侵襲的治療群)、15.0%(保存的治療群)であり、後者は統計的に有意に低い結果でした(HR 0.75、95%CI 0.57-0.99)。

また、手技に関連する合併症は1%未満であり、侵襲的治療戦略は安全性を指摘されています。しかし、侵襲的治療群では血行再建が行われた患者の割合が49.9%と限られており、全体の治療効果に影響を与えた可能性があります。さらに、保存的治療群の24.2%は追跡期間中に冠動脈造影を受けており、その影響も考慮する必要があると記載されています。

本研究は、高齢者のNSTEMI管理に関する貴重なエビデンスを提供しています。

発表後は以下の項目でdiscussionが行われました。
・プロトコール逸脱が比較的多い(保存的群でCAGが行われた方が少なからずおり、侵襲的治療群でも血行再建は半分)
・除外基準が医師判断であり、そこにバイアスが発生する
・85歳以上ではどうなるのか
・保存的加療群での脂質管理に関して
・日本の診療の現状で、このデータがどのような形で当てはめれるか。

             発表:嘉村先生     文責:吉岡

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