【論文解説】経皮的左耳閉鎖術に関して:Left Atrial Appendage Occlusion in Patients With Anticoagulation Failure vs Anticoagulation Contraindication【論文解説】

Left Atrial Appendage Occlusion in Patients With Anticoagulation Failure vs Anticoagulation Contraindication
JACC. Cardiovascular interventions 2024 May 08.

(背景)経皮的左心耳閉鎖術 (LAAO)は、経口抗凝固療法(OAT)を使用できない心房細動(AF)患者に対する全身塞栓症の予防目的でClass 2aで推奨されている。経口抗凝固薬を内服しているにもかかわらず脳梗塞を来す心房細動症例【OAT failure症例】は脳梗塞の再発のリスクが高く、LAAOの恩恵を受ける可能性もあるが、現在のガイドラインではClass 2bでの推奨となっている。

(目的)本研究では、OATで血栓イベントを起こした心房細動患者におけるLAAOについて、過去に行われた OATの禁忌を有する心房細動患者におけるLAAOレジストリデータ(EWOLUTION Registry)と比較することでその有効性を示した。

(方法)STR-OAC LAAO国際レジストリは、OATでの血栓イベントのためLAAOを施行した患者を対象とした。このコホートは傾向スコアマッチングを受け、OAT禁忌のためLAAOを受けた患者を代表するEWOLUTION(Evaluating Real-Life Clinical Outcomes in Atrial Fibrillation Patients Received the ShiefMAN Left Atrial Appendage Closure Technology)レジストリと比較した。主要アウトカムは虚血性脳卒中であった。イベント発生率はコホート間およびOATのない過去のデータと比較し、リスクスコアに基づく相対的なリスク低減を得た。

(結果)438組のマッチドペアの解析では、STR-OAC LAAOレジストリとEWOLUTIONレジストリのコホート間で虚血性脳卒中発生率に有意差は認められなかった(2.5% vs 1.9%; HR: 1.37)。STR-OAC LAAOレジストリ内の患者は、EWOLUTIONレジストリ内の患者と比較して、血栓塞栓リスク(HR:1.71)は高いが、出血リスク(HR:0.39)は低いことが示された。EWOLUTIONでは死亡率がわずかに高かった(4.3% vs 6.9%; log-rank P = 0.028)。虚血性脳卒中の相対リスク低減率は、OATのない過去のデータと比較して、STR-OAC LAAOとEWOLUTIONでそれぞれ70%と78%であった。

(結論)OAT failure症例でも左心耳閉鎖をすることで、OAT禁忌症例以上に塞栓症イベントを増やさず、塞栓症および出血予防効果が得られた。OAT failure症例では左心耳閉鎖 + OAT継続での脳梗塞予防が望ましい可能性がある。

院内では下記のdiscussionとなりました。

・院内症例と比較して、欧米ではやや若年の患者に経皮的左心耳閉鎖術が行われている。左心耳閉鎖術の適応は本邦では高齢者が中心となっているが、より若いうちにした方がその恩恵を受けられるのではないか?

目次

【AIコメント】

この研究は、OAT施行中に血栓性イベントを発症した患者に対するLAAOの有効性を示しているが、血栓塞栓リスクが高い点には注意が必要である。出血リスクが低いことは利点だが、ランダム化試験が必要である。現時点では、OAT失敗例に対するLAAOの適用は慎重に検討すべきである。

発表:横井先生

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