【論文解説】発作性および持続性心房細動におけるメタボロミクスとバイオマーカー:Metabolomics and Biomarkers for Paroxysmal and Persistent Atrial Fibrillation

Metabolomics and Biomarkers for Paroxysmal and Persistent Atrial Fibrillation
Zhang et al. J Am Heart Assoc. 2024 Feb 6;13(3):e032153.

背景:

心房細動(AF)は、世界中で最も一般的な不整脈であり、血栓塞栓症、心不全、死亡率の増加など、深刻な合併症を引き起こします。AFの診断および進行を予測するための血液ベースのバイオマーカーの開発が求められていますが、これまでの進展は限定的でした。本研究では、AFに関連する代謝バイオマーカーを特定し、発作性心房細動(AFPA)と持続性心房細動(AFPE)の間でのメタボロミクス(代謝プロファイリング)および関連する代謝バイオマーカーの違いを明らかにすることを目的としています。

方法と結果:

本研究では、2021年12月から2022年12月までにAF患者および冠動脈造影で陰性結果を示した洞調律の患者から、血漿サンプルを前向きに収集しました。対象者は、AFPA、AFPE、洞調律の3つのグループに分けられ(N=54)、超高性能液体クロマトグラフィー質量分析を用いたメタボロミクス解析を行いました。初期のメタボロミクス解析では、36種類の差異代謝物が検出され、そのうち4つは検証フェーズで高い感度と特異性(AUC > 0.8、P<0.05)で確認されました。さらに、受信者動作特性(ROC)解析を用いて、これらの代謝物がAFのバイオマーカーとしての可能性を持つかを評価しました。バイオインフォマティクス解析により、不飽和脂肪酸の生合成、グリオキシレートおよびジカルボキシレート代謝、炭素代謝の経路が確認されました。アラキドン酸はAFPAの潜在的なバイオマーカーであり、グリコール酸およびL-セリンはAFPAおよびAFPEのバイオマーカーとして機能し、パルミテライジン酸はAFPAのバイオマーカーとして特定されました。

結論:

このメタボロミクス研究では、AFにおいて36の差異代謝物が検出され、そのうち4つが高い感度と特異性を持つことが確認されました。これらの差異代謝物は、AFの診断および病態進行のモニタリングにおける新たなバイオマーカーとして利用される可能性があります。特に、アラキドン酸はAFPAに特異的なバイオマーカーとして、グリコール酸とL-セリンはAFPAおよびAFPEに共通するバイオマーカーとして重要視されます。本研究は、AFの精密診断と治療に新たな洞察を提供し、AF患者の臨床管理において革新的なアプローチを示唆しています。これにより、AFの早期診断および治療の改善が期待され、患者の健康に対する負担を軽減することが可能です。

発表後は以下の項目で討議が行われました。

・それぞれのpathwayの関係についても評価するべきではないか。

・血清ではなく、組織で解析するべきではないか。

・発作性と持続性という分類が、そもそも病態を反映しているのか。

発表・文責 鍋嶋

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