Characteristics and natural history of early-stage cardiac transthyretin amyloidosis
Steven Law, Melanie Bezard, Aviva Petrie, Liza Chacko, Oliver C. Cohen, Sriram Ravichandran, Olabisi Ogunbiyi, Mounira Kharoubi, Sashiananthan Ganeshananthan, Sharmananthan Ganeshananthan, Janet A. Gilbertson, Dorota Rowczenio, Ashutosh Wechalekar, Ana Martinez-Naharro, Helen J. Lachmann, Carol J. Whelan, David F. Hutt, Philip N. Hawkins, Thibaud Damy, Marianna Fontana, and Julian D. Gillmore
European Heart Journal 2022. 43, 2622–2632
早期の段階のATTR心アミロイドーシス(ATTR-CM)の特徴と予後についての論文を矢島が紹介しました。
本邦でも、疾患修飾治療薬としてタファミジスが使用できる状況となり、ここ数年で積極的なATTR-CMの診断が進んできました。疾患修飾治療薬の適応検討において、より有効なATTR-CMの病状ステージがどこであるのかは、非常に重要な検討課題となっています。本論文では、National Amyloidosis Center (NAC) ATTR stageⅠの患者を後ろ向きに検討し、その特徴と予後について述べています。
NAC ATTR StageⅠはNT-proBNP≦3000ng/l、eGFR≧45ml/min/1.73m2と定義されますが、この中でさらにStageⅠa(NT-proBNP≦500ng/L、利尿薬使用量フロセミド換算で<0.75mg/kg)とStageⅠb(NT-proBNP>500ng/L、利尿薬使用量フロセミド換算で≧0.75mg/kg)を分類し、その差を解析しています。他施設の後ろ向き研究で、879人のNAC ATTR StageⅠのATTR-CM患者が登録されました。
診断時の患者の特徴としては、年齢に両者での差は認められませんでしたが、StageⅠaではTroponin Tが有意に低く、eGFRが高い結果でした。また、StageⅠbでは、ALP・γGTPが高く、心エコーでの左室壁厚が厚い、EFが低いといった特徴がありました。6分間歩行試験はStageⅠaで歩行距離は長く、NYHA classⅠ°の割合はStageⅠaで多く見られました。
StageⅠaとⅠbの生存曲線では明らかにStageⅠa患者の予後が良く、イギリスの一般人口と比較しても良い結果でした。一方、StageⅠbについては、一般人口と比較して生命予後が悪い結果となりました。多変量Cox回帰分析ではStageⅠaに対しⅠbでHR 5.06の結果となりました。
NAC ATTR StageⅠのATTR-CM患者は、診断時のNT-proBNPの値や利尿薬の必要性によりさらに分類することができ、StageⅠaのATTR-CM患者では、短期から中期の生存期間における心血管死が明らかに少ないことがわかりました。
発表・文責:矢島